逆だったのか…

あんなものが…

と

他人には思えるようなものだが

（それらがなんであるのか

（詳述はしないし

（場所がどこなのかも

（あえて述べないでおく

男は

むさぼるように

それらが集積する中へと踏み込んでいき

それらのなかでも

とりわけ彼を惹きつけるものを

奮い立たせるものを

前後の見境さえ失わせるほど興奮させるものを

犬がかつて埋めておいた御馳走をさがして

土砂をたいへんな勢いで掻き出すように

さがし続けている

見ていると

もののなかへ入っていく

というより

ものが彼のなかへ流れ込んでいく

たいへんな勢いで

豪勢な渦を巻いて流れ込んでいく

と見えてくるようになり

そうか

逆だったのか

と

思い到ったのだった

ものの魔

ものの引力

ものの憑依力

ものの見出され欲せられたいという底知れない欲望

これに

やられていくところなのだ

と

見えた