2019年8月30日金曜日

夜の芝生のひろがりも

 

踏み出ると

でも、出ないで
「テレビ、始まるよ、ほら、あれ、なんていったか、あれ……」
軋むというのでなく、ごとごとする重い戸を
引いているのだ、あれは……

夜の芝生のひろがりもぼくの宝
鳴きやんでいる露虫たちは蟋蟀の声をどう聴いているのかしら……

星がいっぱい見たいがそんなに広く見えない
星がいっぱいいつも見ていたい……

踏み出ないのは
ぼくでなくなる気がするから
踏み出ると

夜はぼくがぼくに会いがちになる
でも昼だって会いがちになる

大きな川から帰って
アゲハの幼虫がいっぱいいる木を見つけた
川を見ると海を思うから
海をひきずりながらアゲハの幼虫たちに会った

拾った石たちが
投げてくれ
とぼくの手に求めてくる

いまは夜
いま夜

夜の芝生のひろがりもぼくの宝




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