2022年7月27日水曜日

LGBTI


 

スズちゃん

いうのは

ぼくのうちでは集合名詞で

スズムシのことを

まとめて

指し示すときなんかに

使う

 

「スズちゃんの餌を替えなきゃ」

とか

「スズちゃんに霧吹きしなきゃ」

とか

ちょっと

旅行に出るときなんかは

「スズちゃんの餌保つかなあ?」

とか

そんなふうに使う

 

なんせ

去年もらって育てて

晩秋

死に絶えるまえに

産み落とされていった卵が

ぜんぶではないまでも

そこそこの数

みごとに孵化して

夏のさかりに入ったこの時期

飼育ケースのなかに

スズちゃんは

うじゃうじゃしている

多すぎるとまではいかないが

スズ密度は

ずいぶん高くなっている

 

こうなると

餌を替えるのは日課になるので

なにかといえば

考えることは「スズちゃん」となる

餌のことを考える

というのは

どういうことかというと

毎日取り替えなくってもいいかな?

とか

かといって二日にいっぺん

と決めてしまっていいいわけでも

ないんだな

とか

餌の状態を見ながらけっこう悩んだりする

ということなのだ

おもにキュウリだのナスだのを輪切りにして

いくつも楊枝に刺して入れてあるが

これらがやけに干からびる日もあれば

すぐにカビが生えてくる日もある

ナスなんか腐って崩れ落ちてしまう日もある

餌のそうした状態を

六時間とか八時間とかすると見直して

ナスは替えようかな?

キュウリのほうはまだいいかな?

などと

けっこう細かく考えるのだ

煮干しも数本楊枝に刺して入れてあって

こっちのほうはけっこう保つが

それでも急にカビに覆われているときもある

ひょっとしてスズちゃんは

カビなんかも食べちゃうのかもしれないが

見栄えがよくないし

もしカビが苦手で大量死されたら困るから

保ちのいい煮干しだって

いい加減なところで替えないといけない

 

そんなこんなで

7月からは大いそがしとなって

まだ羽根も生え揃わないから

鳴いてもくれないのだが

世話だけは大変な夏の日々となっている

 

しかし

卵から孵してみたのははじめてで

スズムシというのが

小さいうちから

こんなに機敏に跳ねまわるものとは

知らなかった

羽根がちゃんと生えて

おもむろに鳴き始めたりするさまは

昔からときどき見てきたが

それ以前の幼少年時代に

まるで猫の子みたいに

わんぱくに歩きまわったり

跳ねまわったりするとは知らなかった

スズムシというのは

ひょっとしたら

鳴くための羽根が生え揃う前が

いちばん生き生き

ちょこまか

しているかもしれない

 

こうして

とにもかくにも

特定の虫を贔屓して世話してみると

おもしろいもので

虫というもの全般に親しみが湧いてくる

ゴキブリの顔だって

スズムシの顔とたいして変わらないし

蚊だって似たようなもので

これまで人間界の習慣に盲目的に従ってしまって

ひどい殺生を平気でしてきてしまったと思う

そう思うように自然になってくる

そうしてLGBTIなんて思うようになって

INSECTの権利を守らねばならない!

ぐらいのこともたびたびアタマをよぎるようになってくる

まったくもって

スズちゃん様々なんである

 

 




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