2024年4月3日水曜日

さようなら黒人老婆よ!


 

 

夢なら

だれでも

とんでもないものを見続けるのだから

会えば夢のはなしばかりしあう

そんな友たちがいても

いいものだろう

 

けさ見た夢は

あまりに

こちら

物質界のじぶんとかけ離れているので

こちらのじぶんの生活や

じぶんと

どう結びつけたものだか

ちょっと

めんくらってしまった

 

めんくらえる夢を見る

というのは

なかなか

贅沢で

しあわせなものだ

 

その夢のなかでは

なんだかわからないが

ふたりの老婆といっしょに住んでいて

そのふたりとも他人なのだ

 

ひとりはやけに太った黒人で

すごく老いているのだが

色艶のいい元気そうな黒人老婆である

しかも巨体だ

 

もうひとりの老婆は

帽子こそかぶっていないものの

ペルーあたりの

民族衣装っぽいものを着て

こちらもたいへんな老齢なのに

すこぶる元気そうで

だいたい

ひっきりなしにしゃべり続けている

 

この老婆たちは

いつもふたりでソファーにならんで座っていて

おかげで

ぼくが座る場所は

ソファーなんかにはない

ぼくときたら

いつも

背もたれもない木椅子に

ピノッキオみたいにはかなげに腰かけて

老婆ふたりのはなしを聞かされているしまつだ

 

あるとき

黒人老婆の動きが止まってしまった

ペルー老婆が

おや、どうしちゃったのかねえ?

なんて言いながら

黒人老婆のほっぺたをピシャピシャしたり

髪の毛をひっぱりあげたり

頭や肩をひどく揺すってみたりしたあげく

死んじゃったみたいだね

と言うので

ピノッキオたるぼくも

そうか、死んじゃったのか……

と思って

黒人老婆を見つめた

ペルー老婆が

黒人老婆のからだを引っぱり上げてみたあと

手を離すと

黒人老婆のからだはソファーから滑り落ちて

床に転げ落ちてしまった

そのまま床から立ち上がってくる気配もなく

横たわっているままなので

さっきまで生きてソファーに座っていたのに

死んでしまって

こんなふうに動かなくなっちゃうんだな

と思った

かなしいとか

どうしようとか

そういう思いはまったく湧いて来ず

そもそも

生きていたときも

ソファーに座ってばかりいて

どうということもなかったけれどな

などと

すこし冷たいかもしれない思いを

ちょっと抱いた

 

目が覚めて

こちらの20244月の日本

とやらに戻ってきてからも

黒人老婆の印象はけっこう強烈に残り

どんな意味あいがあるんだろう?

とか

どうして縁もゆかりもないこんなひとが

夢なんかに出てきたんだか

とか

いろいろ考えたが

どうやら

けっこう桜も咲いてきたようだな

などという思いが

湧いてきて

黒人老婆の印象は

消えはしないが

意識の奥のほうに退いていってしまった

 

さようなら

黒人老婆よ!

 

そういえば

名前を

夢のなかで

聞かなかったよ!







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