2024年6月24日月曜日

雨が楽しい

 

 

 

日本の6月は

雨がいっぱい降る時期ときまっていて

あまり降らなかったりすると

逆に

たいへんなこと

 

子どもの頃は

雨はめんどうで

いやで

きらいだった

 

食パンを冷蔵庫や冷凍庫に入れたりする

発想のなかった昔は

6月といえば

買って来た食パンには

すぐにカビが生え

生えたところを毟ったり

焼いたりして

食べようとすると

パンの量はずいぶん少なくなり

かたちも

いびつになってしまった

 

けれども

傘と長靴さえあれば

雨の戸外に出るのはけっこう楽しく

水たまりでは跳ね散らかし

傘をさかさまにして

雨を溜めてみたりして

どう見ても

めんどうでも

いやでも

きらいでもない

振舞いだった

 

ほんとは

けっこう楽しんでいたんじゃないのか?

いまになると

思い出されてくる

 

ずいぶん歳を重ねてくると

どうしたことか

ほんとうに

雨が好きになってきた

 

窓から

降っている光景を見たり

傘を差して外に出たり

そうするだけで

雨は楽しい

 

なんでこんなに

好きになってきたんだろう?

と思ううち

気づいたことが

ひとつあった

 

子どもの頃から

いまに至るまでに経験した

さまざまな雨のことを

さまざまな雨とともに起きたことを

さまざまな雨のときにいっしょだったひとびとのことを

終わることなく

つぎつぎと思い出し続けるのだ

 

ただ雨が降っている

というだけで

さまざまなことやひとびとや光景が

つながって

思い出され続けてくる

 

それが

楽しいのだった

映画を見るより楽しいし

YouTubeなんかよりも楽しい

雨が媒介して

えんえんと続いていくじぶんだけの動画に

こころのなかを

奪われ続けてしまうのだ

 

面白いのは

ごく小さかった頃にあてがわれた雨傘が

いまも手に握っているように

ありありと見えてきたり

小学生の頃の雨傘も見えてきたり

学生時代の折り畳み傘の

軸近くに穴が開き始めてきたのも見えたり

ついこの間まで何年も使った

ビニール傘が

骨が折れてしまう前のすがたで

ふたたび手のひらに戻ってきたりすること

 

ちょっと強く想像力を使えば

これまで使ってきたたくさんの傘たちが

どれもみんな

使えるかたちで戻ってきて

手のひらに

握りしめられること

 

 





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