2021年12月26日日曜日

子供の頃にはじめて持った刀

 

 

なにかのおり

そういえば

子供の頃にはじめて持った刀は

金属板を曲げたすきまにゴムを挟ませたもので

ひとに斬りかかっても

あまり痛くない作り方のものだったと

鮮烈に思い出した

 

幼稚園の時のことで

しかも

なにかの発表会のようなおりに

園児数人で

白虎隊の演舞をしたが

そのために使った小道具だった

 

幼稚園児ながらも

ゴムを挟ませた仕様は

なかなかよく考えてある

と思ったけれど

同時に本当には切れない

ウソの刀なんて持つ

わびしさも感じた

切れなくてもいいから

せめて硬い鉄製がいいなあ

などと思った

 

いま思い出すと

幼稚園児に白虎隊!?

と驚いてしまう

 

  ♪戦雲暗く 陽は落ちて
   弧城に月の影悲し
   誰が吹く笛か 識らねども
   今宵名残の 白虎隊
  
   紅顔可憐の 少年が
   死をもて守る この保塞
   滝沢村の 血の雨に
   濡らす白刃も 白虎隊

 

いろいろな歌手が

むかしはこれを歌っていて

霧島昇だの美空ひばりだの

藤山一郎だのの歌唱は

いまでもYouTube

すぐに出てくる

 

だれのレコードで踊らされたのか

もうわからないが

少年剣士たちが

昔むかし勇敢に戦って

そうして死んでいった

というぐらいのことしかわからず

歌にのせられた剣舞をし

動作を遅れないようにとか

ちゃんと刀を抜けるようにとか

刀を他の子に当てないようにとか

そんなことばかりに気をとられつつ

ともかくもやりおおせた

 

いま記憶の中に煌めくのは

刀がしばらく自分の部屋にあって

ときどき取り出しては振りまわし

そうこうするうちに

薄い金属板なものだから

ぶつけたおりに途中で曲がってしまい

それを直すとまたヘンに曲がり

またそうこうするうちに

まっすぐに直しようがなくなって

ついに捨ててしまったことだが

あの刀が自分の部屋にあり続けて

ついに捨てられてしまうまでの

刀への思いだとか変化の総体だとかが

ひとつのまとまりとなって

しっかりと記憶の中に格納されているのが

幼稚園児の記憶だというのに

なかなかたいしたものじゃないかと

感心させられてならない





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