インターネットというものができてから
見てみてわたし
すごいでしょわたし
うれしかったのわたし
かなしかったのわたし
さびしいのよわたし
などなどなど
他人の目に映りたがっているわたしさんたちが
ほんとにいっぱいいるんだなあ
とわかった
甘い甘い連中
ま
バカなんだけど
そんなのも
人間の自然な本性ってものかな?
いまの若いひと
知ってる?
いまの若くないひと
覚えてる?
池田満寿夫の『エーゲ海に捧ぐ』が
芥川賞をとって一世を風靡していたことを
なにかといえば
庄司薫の『赤頭巾ちゃん気をつけて』か
柴田翔の『されどわれらが日々』が
大学生の話題になるべきであるかのような空気の
あったことを
高橋洋子の『雨が好き』が中央公論新人賞をとり
ひと頃ずいぶん
もてはやされたことを
椎名桜子の『agua de beber おいしい水』が
いったいどうして
小説として書店にあんなに麗々しく並んでいたのか
まったく理解不能だったことを
一時的にだけ
あるいは
二時的
三時的
十時的
二十時的
三十時的にだけ
わあわあ言われて
商品として店頭を飾り
若者の喫茶店でのおしゃべりにのぼり
だんだんと消えていったり
まだ本屋の片隅に残ってんのかと思われたり
やがてすっかり消えたかと思うと
古本屋の見切り本の箱の中に
けっこうキレイな状態でふいに懐かしく発見されたり
とはいえ
とはいえ
ようするに
結局
世界の名著には数えられることなしに
永遠の忘却の中へと
フェイドアウトしていった
ことばたち
映像たち
音たちが
あまりにあまりにあまりにたくさん
あったことを
いま
新作として店頭に並ぼうとしているもののすべても
同じ運命を辿るしか
ないことを
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