歳を重ねてくると
過ぎた時間の数々は
空間に
感じられてくる
巨大な館や城のようで
微細に通路や
隠し路が張り巡らされており
かつてそこを
一応は
生きてきたつもりでも
とてもではないが
知り尽くせてなどいない
どの通路が
どの扉に通じていたか
その扉のむこうに
どんな居間があったり
ホールがあったりするのか
まったく
知らなかったりする
過ぎた時間は
巨大な水晶球のようで
ためつすがめつ
さまざまな角度から
くりかえし
眺め直されるべき
対象となる
グルネマンツが
息子パルジファルに言う言葉が
譬えでなしに
リアルな指摘と聞こえる
[パルジファル]
ほんの少ししか動いていないのに
すでに
遠くまで来たようです
[グルネマンツ]
それはだな
息子よ
ここでは
時間が空間に変わるからだよ
ケルト伝説を扱う『パルジファル』に
ワーグナーは
インド仏教やラーマーヤナを
発想の電極として導き込んでいたが
彼の仏教研究は
その後に書かれるべき作品
『勝利者たち(Die Sieger)』のためのものだった
1883年2月13日の
ヴェネツイアでのワーグナーの急死は
世界初の仏教オペラを
未生の境域へと
戻してしまうことになった
発想の上で
後を継いだのは
物理学者だったのか?
ヘルマン・ミンコフスキーが
四次元時空間論を提起するのは
25年後の
1908年である
それはそうと
今年は忘れずに
2月13日に
ワーグナーの没後140年を
讃えようではないか
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