2023年2月11日土曜日

ここでは時間が空間に変わるからだよ

 

 

歳を重ねてくると

過ぎた時間の数々は

空間に

感じられてくる

 

巨大な館や城のようで

微細に通路や

隠し路が張り巡らされており

かつてそこを

一応は

生きてきたつもりでも

とてもではないが

知り尽くせてなどいない

どの通路が

どの扉に通じていたか

その扉のむこうに

どんな居間があったり

ホールがあったりするのか

まったく

知らなかったりする

 

過ぎた時間は

巨大な水晶球のようで

ためつすがめつ

さまざまな角度から

くりかえし

眺め直されるべき

対象となる

 

グルネマンツが

息子パルジファルに言う言葉が

譬えでなしに

リアルな指摘と聞こえる

 

[パルジファル]

ほんの少ししか動いていないのに

すでに

遠くまで来たようです

 

[グルネマンツ]

それはだな

息子よ

ここでは

時間が空間に変わるからだよ

 

ケルト伝説を扱う『パルジファル』に

ワーグナーは

インド仏教やラーマーヤナを

発想の電極として導き込んでいたが

彼の仏教研究は

その後に書かれるべき作品

『勝利者たち(Die Sieger)』のためのものだった

 

1883年2月13日の

ヴェネツイアでのワーグナーの急死は

世界初の仏教オペラを

未生の境域へと

戻してしまうことになった

 

発想の上で

後を継いだのは

物理学者だったのか?

 

ヘルマン・ミンコフスキーが

四次元時空間論を提起するのは

25年後の

1908年である

 

それはそうと

今年は忘れずに

2月13日に

ワーグナーの没後140年を

讃えようではないか





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