最後のポインセチア

  

 

スーパーマーケットの花売り場に

ポインセチアが置かれている

 

クリスマスフラワー

とも呼ばれるそうだが

これが目に入ると

暮れも近くなってきたと思う

 

いちど

エレーヌにこの花を

持っていったことがある

誕生日が11月22日だったので

これならクリスマスまで

飾っておけてちょうどよい

そう思った

 

結果はさんざんで

こんなものを

どうして買ってきた？

と言われた

 

葉ぼたんなど

花と葉が似たようなものを

エレーヌが嫌いなのは知っていたが

ポインセチアも

大嫌いなもののひとつ

だそうな

 

知らなかった

 

見ていると

落ち込んでくるので

持って帰ってくれ

とまで

言われた

 

よい花の少なくなる冬

ポインセチアのつよい赤は

すこしはなやかな雰囲気を出してくれる

みどりと赤の配色が

クリスマス気分も演出してくれる

そんなことを思って

冬の誕生日にいいのでは？

と買っていったのだが

こうまで嫌いだったのでは

しかたない

せっかく買っていったのに

と思いながら

だいぶ気分を害して

鉢ごと

わたしの住まいへ持ち帰った

 

この時の

ポインセチアは

その後どうなってしまったのか

ぜんぜん覚えていない

クリスマスまで保ったのか

いつ枯れてしまったのか

ふしぎなほど

記憶に残っていない

 

エレーヌの好きな

バラを買っていけばよかったのだし

冬とはいえ

バラも悪いものばかりでは

ないはずだったのだが

なぜかあのとき

花屋の店先で

ポインセチアを選んでみたかったのを

よく覚えている

 

人生ではじめて

買ってみたポインセチアだったし

おそらく

この人生で買う

最後のポインセチアだった