昔より暑くなっている
と皆が言う
のに
ひとりだけ抗して
いやいや
昔のほうが暑かった
強いていえば
体感的には絶対に暑かった
とひとりで
言い続けている
なに言ってるんです
昔なんて
夏でも
30℃行くか
どうか
だったんでしょう?
などと
言う者さえいる始末
それなら
と調べてみたら
たとえば
東京の
1970年7月は34.9℃
1973年7月は34.7℃
1974年7月は34.2℃
と出てきた
やっぱり
暑いじゃないか!
しかも
この頃は
エアコンなどどこにもなくて
ちょっと裕福な家庭の
居間なんかに
起動する時にすごい音を立てるやつが
たまに置かれていたりした程度
国電にもエアコンはないし
地下鉄にもなかった
満員電車など
誰もが汗みどろになって駆け込んで来て
押しくら饅頭して
汗をなすりつけあっていた
小中高の校舎にも
エアコンなど入っていないし
大学の教室にもない
図書館にもほとんど入っておらず
まれに一室ぐらいに設置されている程度
住んでいたのは
鉄筋コンクリートの中だったので
家の中にいると
真夏の昼間の暑さというのは
ほんとうに
半端ではなかった
子どもながらに
若いながらに
血圧上がりっぱなしだったのが
エアコンのない
鉄筋コンクリートの中の
7月や8月だった
大学の
夏休み前の講義なども
忘れがたい
蝉がジイジイ鳴くなかで
大教室の窓を
どれも全開にしてあるのだが
風が入って来ない時など
窓を開けていたって
どうにもならない
仏教の唯識論講義など
内容も内容だから
灼熱の空気の中で幽体離脱しそうだったし
現象学の講義など
どこが面白いのかわからず
必死に聴いているうちに
五次元あたりに行ってしまっていた
エアコンまるでなしで
34.9℃
34.7℃
34.2℃
の中で知的生活してみろ!
って言うの
ある夏休みに
どう見ても36℃以上に達している
鉄筋コンクリートの自宅で
ちょっと急いで
マルケスの『百年の孤独』の和訳を読んでいた時なんぞ
似たような名前ばっかり出てきて
気が狂うかと思った
読んでいるうちに寝落ちしてしまうので
数ページ戻って読み直すことが
くり返された
ドストエフスキーの『罪と罰』も
猛暑の日々
駅に並んで旅の列車チケットを買う時に
読んだものだが
推理小説っぽい『罪と罰』のほうは
暑さの中のアタマでも
けっこう楽しんで
ついて行けた
ほんと
昔のほうが
ぜんぜん
暑かったんだぜ
人間も
な
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