2014年8月22日金曜日

ポイント


  
われわれは自分自身を、よりはかない、うつろいゆくものにしよう…
ウイリアム・バロウズ『ウエスタン・ランド』




世界のいま
そのポイントをおさえておこう!
のお時間です

あちこち
騒々しくなっておりますね

爆撃だの
衝突だの
紛争だの
虐殺だの
たいへんです

けれども
そういうことは
むかしからございました
そういうことのない時代など
なかったのであります

とはいえ
いまの世界が
むかしとガラッと変わりつつあるところは
ひとを殺すときの
言い草の
まぁ
キレイさっぱりとした
消滅です
理由のつけかたの放棄です
殺す刹那の
感情処理の不要化です
合理化の霧消です

殺したくないのだけど
しかたなく…
などと
カワイイ理屈は
つけなくなりました
食肉処理場の作業員が
豚や牛や鶏をつぎつぎ殺していくように
敵の人体を
どんどん死体化していきます
処理していきます

平和のためとか
正義のためとか
自衛のためとか
まだそんなことを言う
オールドファッションドな輩もおりますが
概して殺し方に
逡巡がなくなりました
まよわなくなりました
殺さないでおいたほうがいいかも…
殺さないでおこうか…
そんな選択肢が
あたまの中に浮かばなくなった連中が
世界のいたるところで
大量発生中です

ここがポイント
これが
世界のいま
です

じぶんは大丈夫だろうとか
国連や国や同盟国が助けに来てくれるだろうとか
そんな甘いことは
もう
これからは
思わないことです
遺憾だとか
厳重抗議だとか
非難決議だとか
そんなことを
空調の効いた
掃除の行き届いた
大きな会議室で
いい生地の
仕立てのよいスーツを着た人びとに
もったいぶって発言されて
ぷすぷす
国際世論とやらが
しばらくくすぶっても
いつもながらに
キレイに
国際的に感情処理されて
おしまいです

どうしたらいいの?

なんて
子どもじゃないんですから
甘いことを
もう
言わないようにしましょう

今日にも
明日にも
理不尽に殺され
腹や胸を
撃ち抜かれたり
引き裂かれたり
首を掻き切られたりしてもいいと
覚悟をしておきましょう
どうしょうもないのです

あなたがたには
あなたがたの前世までの業が見えない
あなたがたがやってきたことの
大がかりな刈り取りの時期が来ているのです
あなたがたを殺すのは
あなたがた自身の宿命です
お好みならば
神があなたがたを殺すのです
あなたがたに命を貸与し
慰安も喜びも与えてきた
巨大な演出家である
あなたがたの神
そろそろ
幕だよ
との思し召し

どうしょうもないのです

たけり狂った人間が
あなたがたの首を狩らなくても
昨日まで予想もしなかった集中豪雨が
大地震が
台風が
大火が
あなたがたの生命を刈り取りに来る
ここにいるから安心
あそこに逃げれば安心
そんなものは
もうないのです
歩道にいても
宿命は暴走自動車となって
あなたがたを蹴散らしに来る
びくびく
ひっそりと生きのびていても
あなたがたの対内が
あなたがたに謀反を起こし
たくさんの大病難病のどれかを炸裂させ
あなたを病院通いに陥れる
投薬され
手術され
あなたがたは前線離脱
もう夏の砂浜を走っていくことも
秋山をハイキングすることもない
冬のゲレンデを疾走することもない
若く健康な家族で休日を楽しむこともない
いつも薬のにおい
いつもトイレの困難
いつも汚れたシーツの取り換え時期の配慮
いつも湿った布団干しの苦慮
買い物も息を切らしながら
どうにかこうにか
帰ってきたら倒れ込んでしまう
冷蔵庫に生鮮食品を入れなきゃ入れなきゃ
と思いながらも
動けないで転がりつつ
まだ若かった頃の軽い機敏な体を
ファンタジーの人物たちの物語ほどに遠い
遠いお話のように思い出したりする…

すこし
お話が広がりすぎましたね

今日のポイント
いろいろ
言えますが
まぁ
覚悟をしよう
ということでもあります

死の覚悟です

病気事故紛争天災が
今日でなくとも
明日あさって
かならずあなたがたを襲います
まだ繋がっているあなたがたの首を
かならず断ち切って
ころころ
地べたに廊下に風呂場のタイルの上に
転がしていきます
覚悟をしましよう
覚悟をしておきましょう

いまこそ
武士道ですナ

にっぽんはすばらしい伝統文化を持っている

冗談ではないのです
生体は死体になっていくのが仕事
不完全な死体として生まれ
だんだん完全な死体になっていくのが
人生サ
と寺山修司さんもおっしゃっていました

武士道とは死ぬことと見つけたり
生とは死ぬことと見つけたり

あなたがたは死にます
あながたは死体になります
口をあけて
糞尿垂れ流して
ただちに腐敗しはじめる死体に
あなたがたはもれなくなっていくだけです

ぜんぶに執着を捨てましょう

どうせすべて消え去るんです
どうせあなたがたは死ぬんです
どうせあなたがたは腐るんです
どうせあなたがたは焼かれるんです
どうせあなたがたは忘れられるだけです
どうせ地球なんて消滅するんです
どうせ宇宙なんて変幻を続けるだけの原子の渦です

ここが
すでに戦場です
激戦です

あなたがたには死があるだけ

その瞬間を待っているだけです
あなたがたは地球という独房の死刑囚たち
生きてここを出た者はいないのです
どう死ぬかの違いがあるだけ
死んだ後は忘れられる
死んでいない者たちはじぶんのことしか気にしませんし
死者を思い出すにせよ
それが利用できる場合だけのこと

さあ
お覚悟を





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