2014年8月26日火曜日

たかがNET250mgの100円商品のハンドソープが




だいぶ前
ほんとうにだいぶ前
必要があって
100円ショップで
買ったハンドソープだったが
ようやく
使い終わった
ようやく
ようやく

若肌物語
アロエハンドソープ
とラベルにある
保湿成分アロエエキス配合
NET250mg
だそうな

台所の隅に置いておいたが
炊事や食器洗いは毎日するのに
このNET250mg
なかなか減らなかった
消費税5パーセント時代に
105円で買った
ちいさなボトルなのに
なかなか

買ったのは
忘れもしない
2010年の616
4月から入院した末期ガンの友のために
病室の手洗い用に
最寄駅の100円ショップで

それがどうして
5年も経った今年まで使われたかというと
流しの排水が詰まるから
石鹸類は使わないでくれと
言われたため
水だけで手を洗ってくれと
言われたため

独立行政法人のその病院では
いろいろなことで
ガタガタやりあったが
ここではぶり返さないでおこう
たしかに
細めの排水管に石鹸類を多量に流せば
管が詰まることもあろう
しかし
大の大人の患者たちなら
ちょっとした手洗い指先洗いに
ほんの少しの石鹸しか使わないだろうに

ともあれ
それではしかたがないというので
流しにボトルを置くのはやめて
病床のベッド脇の棚にしまっておいた
洗面所ではべつの石鹸を使うので
けっきょく
ほとんど使わずじまいになった

その年の
晩秋に亡くなってからは
はじめのうち
数人に多少の手伝いはしてもらえたものの
友の家財の整理をひとりで始めて
翌年まで10か月も続く試練となったが
そこの洗面台に
このハンドソープは置かれることになった
仕事が終わってから
友のいない家に立ち寄っての
いっこうに捗らない整理の長い長い時間と日々
いるのなら幽霊になって
出てきて手伝っておくれと
心に思ったり呟いたりしながら
膨大な書類や手紙やメモの一枚一枚
買い溜めたのに使わなかった絵葉書やレターセット
それらに至るまでをひとつひとつ
まるで無限に続く神経衰弱ゲームのように
ひたすら続けた夜々と休日のすべて

しかしNET250mgは見事なもので
一日の整理の終わりには
たびたび手を洗ったというのに
なかなか減る気配がなかった

友の家の整理がようやく済んで
日用雑貨類をじぶんの家に運んできてからが
またそれなりに大変で
もともと自宅にある種類のものが倍以上に増え
押入れもどこも溢れんばかり
そんな中で
もともと家にあった台所用や洗面台用の
ハンドソープが切れるのを待って
このNET250mg
ようやく出番となったのが
たぶん
2年後ぐらいのこと

たったひとつの
たかがNET250mg
100円商品のハンドソープが
こんなに長く人生の伴侶となったことがあったか
案外と長持ちするものなのかもしれないが
友の死を必死に先送りしようとしていた頃に買ったものが
友の死からまるまる5年も経って
ようやく使い切られたことには
けっこう感慨もある
汚れたボトルやまわりのラベルが
なんだか貴重に思えて
5年も経ったか
5年も経ったか
思いながら
なかなか捨てかねていた

たかがNET250mg
100円ショップのハンドソープの
こんなボトル
選ぶいとまもなく
急いで買い求めたこんなものが

なかなか

なかなか





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