2016年11月10日木曜日

あゝ、よい香りがしている



見えないからだで
どこかの隙間を流れていく空気のように
過ぎてゆく
人々の間

ふいに樹になっていた(なにかの象徴である)小腸を
労わりながら
舞い散っていた過去の雪の大通りの(殊に思い出深い)ポスト近くを
裸足でほたほた
あゝ、辿っていった…

分裂したまゝの私たちを山蔭神社の鳥居の脇で
と、り、ま、…、と、め、
擦り減った石段の縁に腰を下して
もう
すっかり私こそが
寿老人となってしまっている

松のよい香りがしている
この細道を
まだ長く行くから
猶も見えないまゝにしておこう
からだは

どこかの隙間を流れていく空気のように
有言だが無音のお祈りを
優曇華のように
震わせながら
香りに乗ってしばらくは
漂っていける

あゝ、よい香りが
している



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