見えないからだで
どこかの隙間を流れていく空気のように
過ぎてゆく
人々の間
ふいに樹になっていた(なにかの象徴である)小腸を
労わりながら
舞い散っていた過去の雪の大通りの(殊に思い出深い) ポスト近くを
裸足でほたほた
あゝ、辿っていった…
分裂したまゝの私たちを山蔭神社の鳥居の脇で
と、り、ま、…、と、め、
擦り減った石段の縁に腰を下して
もう
すっかり私こそが
寿老人となってしまっている
松のよい香りがしている
この細道を
まだ長く行くから
猶も見えないまゝにしておこう
からだは
どこかの隙間を流れていく空気のように
有言だが無音のお祈りを
優曇華のように
震わせながら
香りに乗ってしばらくは
漂っていける
あゝ、よい香りが
している
0 件のコメント:
コメントを投稿