クラーナハの『ヴィーナス』は小さくて
37.7㎝×24.5㎝しかない
奇形に近い裸体が闇の中に立ち
透明のレースを抓んで
肌を隠すような
隠さないような
500年前とも思えないような
驚異的な人体造形
少し
百済観音も思わせる
実物を見たことがあったような
気もしていたが
間違いかな
フランクフルトのシュテーデル美術館に
あるというから
たぶん
見てはいない
行ったこと
ないから
フランクフルトは
『正義の寓意』は
よく洗った大根の肌のような
裸体で
真っ正面を向いて
こちらを見つめている女だから
ちょっと気恥ずかしいが
500年前の女になら
裸で見つめられてもよいだろう
(今ごろ
(どんな色をして
(埋まっているだろう
(このモデルになった人の
(骨は
猫がつかの間
人間の女に
なってみているような『ホロフェルネスの
首を持つユディト』には
ちょっと見惚れた
たぶん
美人というのではない
が
ちょうど奇麗な頃あいの肌
金糸のような髪の毛
首飾りやネックレスや胴着の
細かい描き込み
瞳に映った窓の明るさ
それらには
見入ってしまう
これはウィーン美術史美術館にあるから
かの地で
また
再会するかもしれない
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