ひさしぶりに
ある駅まで
田舎の夜を歩いたが
なんと幸せだったことだろう
そろそろ寒いのに
秋の虫は鳴いているし
家々の飼い犬たちは
通り過ぎていくよそ者に
ちゃんと吠え続ける
月は満月近く
電線の影がきれいに
地に流れている
丈高い枯れ草の茂みは
はだらに闇を成し
遠く近くの家に
温かく明りが灯っている
森の木々が覆い被さるように
道の上に大きく
張り出しているところを
なんと喜ばしく過ぎたことだろう
物語の中にだけいっぱい
繁茂し続けている
夜の木々の指先に覆われて
うつせみの身を運んでいくことの
ひりひりするような実感
この頃薄れかけていた
時空の不思議さに包まれて
なんと幸せな
夜の独り歩きだったことだろう
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