もう寒いのに
秋の虫たちが鳴いている
そうは言っても
今日は暖かめな陽気で
行く川沿いも
穏やかな
薄闇
水を入れた
小さなペットボトルだけを持ち
他には
家の鍵をポケットに入れているぐらいで
身軽な夜のウォーキング
出がけは
喉が寒いか心配だったが
15分も歩くと
身体中の筋肉が温まり出して
もう大丈夫
20分も経つ頃には
背に汗が滲む
なにも持たずに
スマホさえも
持たずに
川沿いの薄闇の中を
急ぎ足でぐんぐん歩いて行くのは
地味なようでも
本当になにか
ちょっと突出した経験だと感じる
生活の流れの中に戻れば
たちまち頭に流れ込んでくる雑事のすべても
ニンゲン関係のすべても
ジンセイのあれこれも
みな捨ててしまって
なにも持たずに
じぶんとかいうものさえ
全部
とは言わないまでも
かなり放り捨てて
薄闇の中を
川沿いの薄闇の中を
明日は超スーパームーンだとかなんとか
すごい名前を付けたものだが
その前夜の今宵
月はちょっとおぼろで
それほど大きくは見えないものの(一晩でグンと大きくなるのか… )
それでもずいぶん明るい
いつもならもっと暗い
川沿いも
だから薄闇
細道がくっきり伸びている
そこを歩いて行く
薄闇の中を
じぶんが先刻まで誰で
今どんな問題を抱えていて
明日どこへ出かけて行くのか
あさってはどこへ行かねばならないのか
そんなこともすべて捨ててしまって
ただ歩いて行く足腰になり
背筋になり
腕はときどき上げようか
下げたままでいいだろうか
そんな程度のことだけを思い
意識は薄闇を見続ける目となって
歩いて行く
穏やかな
薄闇
秋の虫たちが
まだ
鳴いている
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