旧暦のカレンダーを見ていたら
上巳の節句という文字が目にとまり
そういえば
三月三日の桃の節句も
注目しないうちに
過ぎてしまっていたと気づいた
上巳は旧暦三月の
最初の巳の日を意味する
巳は蛇のことだが
春が来ての蛇の脱皮のイメージを
昔の中国では
この頃に見ていたらしい
桃の節句や
女の子の祭りというイメージの奥に
脱皮して成長していく蛇が
最重要なものとしてある
「脱皮しなければ蛇は死んでしまう」
というニーチェの言葉を思えば
個人の成長や季節の刷新ばかりでなく
世の変革にも「巳」の日は繋がる
「脱皮しなければ社会は死んでしまう」
と現代のニーチェなら言うだろう
男の子にとっては
桃の節句はあまりおもしろくない
女の子の家に呼ばれて
ままごとのようなひな祭りの端に
ちょこんと座らされても
勝手がわからず居心地がわるい
雛人形を見ていても
興味を惹かれるような顔ではないし
むしろ薄気味悪い感じがする
幼い頃のそんな経験から
歳を重ねていくにつれ
カレンダーにひな祭りとあっても
無意識のうちに無視するように
ひょっとしたら
なってしまったのかもしれない
引越しが多かったので
いろいろなところに住んだが
幼稚園に上がる前に
男の子の友だちを持ったことは
わたしにはなかった
なぜかどこでも女の子ばかりで
それもちょっと年上が多かった
外で遊ぶ時には雑草を摘んで
水に浸けてお茶のまねをしたり
家に呼んでくれる時には
着せ替え人形を渡されて
きれいに着せてやったりする
女の子はこんな遊びをするのか
と珍しく思ったりさせられたが
子どもとはいっても
もっと乱暴な遊びを好む男の子として
あまりおもしろいものではなかった
それにしても
女の子たちのあいだでたったひとり
男の子だったわたしのことを
年上の女の子たちはよく世話してくれて
いろいろなことを教えてくれたし
ていねいに接してくれた
幼稚園に入ってみて
はじめてべつの男の子という存在に接し
こっちのほうがおもしろくもあったが
いじめあったりもする対象なのは
めんどうでいやなものでもあり
なにかと女の子たちのほうが
楽で安心できていいものだと
いつも思ったりしていた気がする
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