2016年4月3日日曜日

悲惨というものが湿りけのように 


不幸がお前に降りかかり、
お前はそれを阻止できない。
お前の知らぬ間に、
惨事が突然お前の上にやって来る。
イザヤ書47・11


April is the cruellest month
                         T.S.Eliot
四月は残酷きわまる月…
T.S.エリオット)



悲惨というものが
湿りけのように
感知しづらい温度の変化のように
花ざかりの四月の空気の中に
流れ込んできている
ひとのこころが
また数限りなく裂かれ
力を失っていく
したことはされる
数百年の時の差を挿んで
生まれたかたちなき怨念が
けっして消えることのないのを
子々孫々に証されるために
したことはされる
それはもう来ている
花ざかりの景の薄裏に
異様な重さを人は感じている
これほど悲惨な年は
何十年来だろうと言われるだろう
二十年ほど後には
人類史上最も悲惨な期間だったと
言われることになるだろう
それは今年から始まり
来年には過去の大戦の頃のほうが
まだまだよかったと
後のちの語り草になる
この数十年を生き延びる
わずかの民族や国民のみによって




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