2016年4月3日日曜日

さぁくら さくら

   

花見の人たちは幽霊のよう

うかれているのか
引かれてきたのか
炙り出されたのか

ひととき
花を見るほかは
近代人らしい目的もない
ふらふらの意識と
それに動かされる身体となって
さくら
さぁくら
さくら
さまよい続ける

曇り空の下で見ると
ほんとうの幽霊も
まじっているのがわかる
ありえないような着物を着て
二百年は前の顔の整えをして
宴の輪に加わっていたり
道のわきに立ちどまっていたり

かれらを見つけても
驚くほどのこともない
多少の時間のずれがあるだけで
十年二十年
三十年もすれば
今日の花見客たちは
みな幽霊

たいていの人たちは
べつの世界の花見に向かうだろうが
この世の花を懐かしみ
春ともなれば舞いもどり
雑踏に交じりに来る人たちも
やはりあるもの

さくら
さぁくら
さくら



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