花見の人たちは幽霊のよう
うかれているのか
引かれてきたのか
炙り出されたのか
ひととき
花を見るほかは
近代人らしい目的もない
ふらふらの意識と
それに動かされる身体となって
桜
さくら
さぁくら
さくら
さまよい続ける
曇り空の下で見ると
ほんとうの幽霊も
まじっているのがわかる
ありえないような着物を着て
二百年は前の顔の整えをして
宴の輪に加わっていたり
道のわきに立ちどまっていたり
かれらを見つけても
驚くほどのこともない
多少の時間のずれがあるだけで
十年二十年
三十年もすれば
今日の花見客たちは
みな幽霊
たいていの人たちは
べつの世界の花見に向かうだろうが
この世の花を懐かしみ
春ともなれば舞いもどり
雑踏に交じりに来る人たちも
やはりあるもの
桜
さくら
さぁくら
さくら
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