2016年7月7日木曜日

ここにいて知るべきことを



届きものは
きれいに枯れた麦の穂と
ふしぎなほど
やわらかい
やはり枯草色の
ハンカチほどの布
数枚

よく知っている
といっても
五回も行っていない
山間の高原
気持ちの通じた
そこの人たちから
この夏と
これからの
世の大混乱を
生き延びる勇気を
と送られてきた
なにかの
役に立つでもない
表象

やわらかい布は
汗を拭う程度には
役立ってもくれそうだが
そうすれば
たちまち分解して
宙に消え去って
しまいそう

さっそく
枯れ切った麦の穂を
ドアのわきの壁に飾り
布は暖炉の上の
ある形象をかたどる
石膏像の下に
わざとくちゃくちゃにして
置いた
このくちゃくちゃさが
驚くべき
アンテナになるから

このように
届きものを配してみるだけで
湧き起こり出す
さまざまな場所での
あまりに多すぎる思い出
思い出だけに従って
しかし生きようとしてはいけないと
よくよくわかっているので
それらを家の中の宙に放つと
さっそく麦の穂と
やわらかい布々の間に
音符のように並んで
星のように光りながら
ここにいて
知るべきことを
鳴らせはじめてくれている



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