ヘンなことを思いついて
実際にやってみた
仕事や用事で
年がら年中行き来する区間や
通りから通り
街から街を
仕事や用事のたまたまポカッと空いた時に
まるで
かつての馴染みの土地に舞い戻って来た亡霊のように
行き来してみた
実際にやってみた
通りも街も駅も
電車やバスも
ありありと総天然色で見える
見えるけれど
ニ重写しのようにモノクロでもありセピア色でもあり
なんという懐かしさだろう
あゝ、あの道のあそこにはちょっと凹みがあって
あゝ、この大通りのむこうからは東京タワーがちょっと見えて
あゝ、この公園のキョウチクトウの繁みには猫がいつも数匹いて
などと思いの底から
ニ重にも三重にも思い出されて来るようだった
ほんとうに死んでしまったのじゃないか?
じぶんは?
まだ生きているつもりだから
余裕を心に湛えながら
そんなことを思ってみたのだが
もちろん
死んでしまったんだ
じぶんは
おとといのじぶんに死なれ
きのうのじぶんに死なれ
さっきのじぶんに死なれ
そうして今
たまたまいつもの仕事や用事から離れて
いつも仕事や用事で行き来する場所をまわってみながら
こんなにも壮絶に懐かしくて
崩折れていく
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