2018年9月14日金曜日

自身の所属階層についての無知はつねに…



富裕層と富裕層ワナビー向けの商売をやっている人が
地震で生活の乱れている北海道の
仕事上関わりのある人びとのことを心配し
どうしているだろうか
大丈夫だろうか
と上司に話してみたところ
私たちが必要とするのは富裕層だけだから
あんな程度のことではなんの問題もない
と答えてきたそうな

富裕層なら
キャッシュで一億や二億の引っ越し先はすぐに買えるので
たしかになんの心配もない
北海道内でいくらでも住めるところはあるのだし
北海道がダメならどこにでも越せばよい
日本でなくとも
シンガポールでも
ニューヨークでも
どこに行ってもよいし
彼らならすぐに行けるのだから

あゝ、まさに
2018年における詩歌や学芸の人びとの核心的問題だな、これは
とわたしは思った

個人の記憶や趣好や感傷や主義的・認識的・思想的差異の
微細な表出にこだわって
自由・平等・連帯にもとづく社会創出精神の完全崩壊の21世紀にあって
沈みゆく巨船の甲板のかたすみに閉じ籠もったつもりになって
とにかく周囲に目と耳をふさいで
なにか人間精神の前衛ででもあり得ているかのように思い込む
そんな人びとが付きつけられている
徹底的な格差の現実

おととい
それなりに旨いことで知られたB級洋食店に集まる寡黙な客たちを
ある大学教員が
静かに美味を味わうグルメな人びと
とネット上のブログに書いているのを見た
たしかにその店は
カツレツやカキフライのたぐいの揚げものが旨く
わたしもたまに行くのを楽しむが
しかし吉野家よりも席と席の間隔が狭く
隣席とすぐにも肘が当たるような狭いカウンターに向かって
つねに身を縮めがちにしながら座り
メニューといっては揚げものとカレーしかない洋食店で食べること
グルメ
などと呼んでしまっては
社会の中にはっきり口を開けている断層をどう認識するのか
この大学教員の
ノーテンキなまでに敷居の低いグルメ概念に
ずいぶん驚かされた

昨夜は三万円のコースのディナーだった
という人に
この大学教員のグルメ話をすると
“自身の所属階層についての無知は
つねに本人の幸福と観察者の驚異と冷笑の源“
と箴言めいたことを言う

そうして
つけ加えた
「三万円ぐらいじゃ、店によるけれど、
「まだまだ、絶対に旨いというほどのことでは
「ないんだよね…



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