よきものは一つにて足る高々と老木の桜咲き照れる庭
窪田章一郎
若いころは
たぶん
だれもが
どんどんモノを
身のまわりに集めようとし
ずいぶん世慣れてきてからも
いわば
惰性のようなぐあいに
モノ集めや
貯めこみは続き
けれども
じっとりとした感じで
気づきは来る
いくつかのモノに
たっぷりと指の腹を馴染ませ
知りつくし
使い切るには
ほかのモノに囲まれ過ぎていては
いけないのだ
と
ひとひとりの
所有の能力なんぞというものには
ほんとうに限界があって
器は
とっても
とっても
ちっちゃいのだ
棲みかの
棚の奥の隅々にあるものや
いくつかの押し入れのなかの
モノ
モノ
モノ
の
使いようのすべてまで
どんな瞬間も
カードにくっきり書き出せるようでなければ
正しい生活とは
いえない
モノと
モノとのあいだに
いつも
大きく気流が流れているようでなければ
正しく生きているとは
いえない
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