列車の来るのを待ちながら
ホームにいて
目を開いてさえいれば見える
たくさんのもの
いろいろなものの
あゝ
なんという楽しさ
むこうのホームに入線した
すこし汚れた列車の
あの車両の長さの設定に至るまでの
設計士たちの想像や
さまざまな計算や
満たすべきだった条件の
数々
それをまだ
わたしが知らないでいたことの
怠惰
列車があのように汚れるまでの
天侯のうつりかわり
整備士や掃除係の努力と
不可抗力
大きな車輪の
円周の長さの決定や
鋼鉄の含有物のパーセント決定に至る
会議の積み重ねと
たぶん
決定後のある晩開かれた
小さな飲み会
車輪と線路のあの接点に
いったい
何キロの重量がかかっていて
列車の走り出す時や
走っている最中
それはどう軽減されるのか
そんなあれこれを思いながら
たゞ
ホームにいる
というだけの時間の
あゝ
なんという楽しさ
まだまだ
知らないでいてしまった
あまりに
多くのことの
あちこちでのざわめき
知っておくれ
知っておくれ
調べておくれ
調べておくれ
と誘ってきてやまない
ものたち
色たち
かたちたち
数量たち
数式たち
過去たち
物語たち
そして
尽きることない
印象たち
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