森の
深くに住む
こと
にしたその詩人
の
詩集は
九〇〇ページ近くあり
収録され
て
いる
詩は五二六編
ある
どれも
森のこと
木々のこと
木々と木々でないもののこと
木々のすきまの空気のこと
せせらぎのこと
流水の冷たさのこと
小動物たちのこと
大きめの動物たちのこと
木々のあいだから見える空のこと
空を流れていく雲のこと
森のなかの無音のこと
無音の圧倒的な圧力のようなもののこと
など
など
の
五二六編
海上町夫
というその詩人
を
わたしは知らなかったが
森の
深く
に
住ん
で
い
る
に
し
て
は
ふさわしくないような
この
姓名に
惹かれて
街
の
奥
の
貧相
な
古本屋の棚
の
奥
の
奥
に並んでいた(じつは傾いでいた)
のを
手に取
っ
たのだった
ぶ
厚い
本
なの
で
値が張る
かもしれないと
危ぶんだが
300円
と
書かれてあったので
他の本
とあわせて
買ってしまった
一月二十一日
の
こと
であった
時間の過ぎ流れるのは
なんとも
速いもので
もう十一月にもなろうとするではないか
今年のわたしは
海上町夫
の
この詩集だけを読みながら暮らしたことになる
詩集の題名は
『シリアの砂漠にいない イオニア海の底にいない』
で
森の奥深くに住んでいることなど
まったく
におわせない
まるで
北京にも
秋にも
まったく
関係のない
ボリス・ヴィアンの『北京の秋』
のよう
だ
『シリアの砂漠にいない イオニア海の底にいない』
などと
題にあれば
手にとりたくなって
しまう
で
は
な
い
か
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