2018年10月26日金曜日

海上町夫の『シリアの砂漠にいない イオニア海の底にいない』

 
森の
深くに住む
こと
にしたその詩人
詩集は
九〇〇ページ近くあり
収録され
いる
詩は五二六編
ある 

どれも
森のこと 
木々のこと
木々と木々でないもののこと
木々のすきまの空気のこと
せせらぎのこと
流水の冷たさのこと
小動物たちのこと
大きめの動物たちのこと
木々のあいだから見える空のこと
空を流れていく雲のこと
森のなかの無音のこと
無音の圧倒的な圧力のようなもののこと
など
など
五二六編

海上町夫
というその詩人
わたしは知らなかったが
森の
深く
住ん
ふさわしくないような
この
姓名に
惹かれて
貧相
古本屋の棚
に並んでいた(じつは傾いでいた)
のを
手に取
たのだった

厚い
なの
値が張る
かもしれないと
危ぶんだが
300円
書かれてあったので
他の本
とあわせて
買ってしまった
一月二十一日
こと
であった

時間の過ぎ流れるのは
なんとも
速いもので
もう十一月にもなろうとするではないか

今年のわたしは
海上町夫
この詩集だけを読みながら暮らしたことになる

詩集の題名は
『シリアの砂漠にいない イオニア海の底にいない』
森の奥深くに住んでいることなど
まったく
におわせない
まるで
北京にも
秋にも
まったく
関係のない
ボリス・ヴィアンの『北京の秋』
のよう

『シリアの砂漠にいない イオニア海の底にいない』
などと
題にあれば
手にとりたくなって
しまう



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