2020年3月3日火曜日

ポトスの鉢がいくつか居間にあって



ポトスの鉢がいくつか居間にあって
どれも
シェルフの上のほうの棚に置いてあるが
扱いは
けっこう
ぞんざいかもしれない

水をやるのはよく忘れるし
土にしても
だいぶ
減ってしまっているものもある
肥料など
まったくやらない
それでも
長い茎を下のほうに何本も伸ばし
葉もけっこう繁茂している

居間は
仕切り戸を開け放って
わたしの書斎とひとつづきにしてあるので
シェルフは書斎にも突き出ているが
書斎側に置いてあるポトスなど
いちばん繁茂していて
どの葉も青々としているし
適度に白い斑も入っていたりして
みごとな姿を見せてくれている
置き時計の上にちょっと葉が被さっているのなど
うれしい小風景となっている

ポトスのもともとの強さのおかげで
こんないい加減な生育法でも耐えてくれているのだろうが
こんなに強いポトスでも
場合によっては
あっという間に滅びてしまうのを
目のあたりにしたことがある

人生の長い時間をわかちあったエレーヌ・グルナックの家に
いくらかはグリーンを
と思って
わたしのポトスを挿し木して
三つほどの鉢を持っていき
室内に置いてやったことがあった

半年ほどは青々と葉も茂り
順調に茎も伸びていったように見えたが
ある時から茎ぶりが細くなり
元気がなくなって
やがて三つの鉢のポトスのどれもが
枯れるというより
腐ったようになって
滅びていってしまった

水をやらな過ぎたからか
それともやり過ぎたからか
そんなことを考えたり
話したりして
こんな強い草をダメにしてしまうなんて
まったくあなたは…
と呆れ口調で言ったりしていたが
それから程なくして
エレーヌは末期ガン宣告を受けることになった

本当は
水のやらな過ぎだったか
やり過ぎだったか
そんなところが理由だったかもしれないが
彼女の末期ガンを告げられた時
わたしはやはりポトスのことを思わざるをえなかった
告げていたのだなと
やはり思わざるをえなかった





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