じぶんという意識のことなど
もうどうでもよくなっているのが
たぶんほんとうの老いというもので
たとえば、宮沢賢治くん
きみにはこれはわからなかったのだよ、やはり
もっともっと生きそこね続けて
なにもかもうまくいかないまゝであることなど
もうほんとうにどうでもよくなって
それでももっともっと生きそこね続けて
もうよだかの星にもクラムボンにもならず
ひかりなんかにもなってしまおうとせず
あいかわらず肉体を持って
肉体にも時間にも空間にも絡めとられ続けて
ついには肉体を師と思うようにさえなり
空間も時間もすばらしい導き手と敬うようになり
なにかの才能などあってもなくても同じことだと知り
みんな死んでしまったが死んでしまった「ようなだけ」だと知り
じぶんという意識も肉体も靄のような軽さだった!と知り
あゝ なんと透明なじぶんだったか!と
雲にも草木にも夕闇にも染み入られている
染み入られているだけの
この淡くふがいなく弱々しいありよう
このことが!
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