夜の食器を洗うのが
ずいぶん遅くなってしまうことがある
台所に立って
ひとりで洗っていると
目のはじっこに見える廊下の暗がりから
あざやかなエメラルドグリーンの衣装をひらひらさせた
見も知らぬ
しかし
どこかで見たこともあるような
楽しげな女性が
ひょいと台所に入って来そうになって
あわてて
また廊下に戻っていく
そんな光景が見えることがある
ぼくの食器洗いの
じゃまをしないようにとでも
思ったのか
ぼくの家といっても
ぼくの家はぼくのものでない空間のなかに
宇宙的時間のなか
ほんの束の間
偶然
のように
あるだけなので
ぼくのものでないそんな空間には
もちろん
いろいろな人やものがいる
みな
それぞれの用事や理由があって
行ったり来たり
座っていたり
寝転んでいたり
ぼおっと
立っていたり
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