1 私、水都ゆらら
誰もいない真っ暗なプールの中に、水都ゆららは生まれた。
気がつくと水の中にたゆたっていた。
ずっとそのままでいてもよかった。
水から顔を出し、水の外に上がったほうがもっとよい、と感じた。
プールから出ると、明かりのない巨大なプール室は真っ暗で、
違うのは、
いつか、これは辛くなるかも、と思った。
いつか、プールの水の中へ帰り、完全に水に戻ってしまうかも、
だが、今は我慢できる。自重よりも強い力が全身に通っていて、
私は水都、と名前が来た。
プールの水の外では名前が要る時がある、
そうなんだ、私は水都っていうんだ。
名前を呼んだ思いが、下の名も必要な時がある、と呟いていた。
すると、ゆららという名が来た。
ゆららは、すぐに水都にくっついて、水都ゆらら、となった。
私、水都ゆらら。
上の名と下の名がくっついた水都ゆららは、
プール室から外に出る重いドアを開けると、空気が冷たかった。
冷たすぎるほどではなかったが、
外、と水都ゆららは発音した。
そうして、外が生まれた。
裸だったので、外の空気の冷たさはすぐに全身に来た。
外では裸ではいけない、と考える人たちがいる、
プールの水の温かさが後ろ髪を強く引いた。
でも、外に入っていってみる、と水都ゆららは思う。
外に出る、のではなく、入っていってみる、
外に出る、と思う人たちが多くいることを、
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