2023年8月24日木曜日

シンデレラの話などを

 

 

 

「どこへ行きたいの?」

「神のところへ」

「神はどこで見つけるの?」

「すべての被造物から離れたところ」

マイスター・エックハルトと裸の男の子の伝説

 

 



 

夏の今年の高校野球には

野球にも

高校にも興味のないぼくも

ちょっと

注目してしまった

 

まさかの慶応が

ずいぶん勝ち残っているっていうので

へえええ

と思いながら

北陸高校や広陵高校との試合のあたりから

ちょっと見てみたら

これは勝ち抜いていくな

こいつら優勝だな

とはやくから確信が持てたので

絶対に仙台育英が勝つ!

とアホなことを言い張る妻と優勝戦で賭けをして

やっぱり勝って

儲けちゃった

500円だけだけど

勝ちは勝ち

 

じつは

高校野球における慶応の勝ちはヤバいなあ

と思って見ていた

 

慶応高校に通っている(通っていられる)学生たちは

すでに高校生にしてニッポンの勝ち組である

両親の総収入はダントツに高く

いちばん少なくても年収2000万を下る家庭はないだろう

お父さんの乗る車は

いろいろ好みはあるだろうが

ベンツは当たり前で

ポルシェやジャグアーやランボルギーニや

という世界である

慶応高校の偏差値は76なので(テストによって違うので目安だが)

単に学生本人の学力レベルだけ見ても群を抜いている

野球部に入る子は中学から上がってきたりして

慶応高校合格レベルの学力はないだろうが

それでも慶応中等部の偏差値は

サピックスだと58

四谷大塚だと64と高いので

ちょっとやそっとの学力ではない

慶応普通部の偏差値も同じ

 

じゃあ幼稚舎や小学校から入れればいい

と思うような人は

まず東京人にはいないと思うが

それというのも幼稚舎や小学校から入るのは

まさに親の収入と

親が慶応出身かどうかにかかってくるからで

そのあたりの低年齢期のお受験のお勉強にかかる費用は

だいたいポルシェ一台分ぐらいかな?

と言われているから

ようするに親の受験ということになる

親の受験というのは

親の経済力や家柄やツテの判定ということだ

 

慶応の勝ちがヤバいのは

勉強はできなくても野球はできる

運動はできる

スポーツはできる

といった子たちの希望を完全に打ち砕くからだ

うちのお父さんは低収入で

出身大学も底辺校で

お母さんなんか定時制高校行ってた

なんていう子の出番を

根底から完全に破壊するからだ

 

勉強もできて

家もお金持ちだし

慶応閥の会社に入り放題だし

見まわすとお父さんやお母さんの友人や知りあいは

みんな金融関係や大企業や広告代理店や

そうでなくてもクリエイターだったり

投資家だったり

そんな人ばっかだな

という環境の子たちが

はい!

今度は野球も日本一になっちゃいました!

しかも一日2時間ぐらいしか練習してないし!

プレゼンもうまく頭もよい監督が

根性とかパワハラとかイジメとかムリとかムダとかと

ぜんぜん縁のない練習環境を作ってくれて

その中で楽しんでわあわあやってるうちに1番!

という子たち

 

来る来ると思っていたが

ついに実体となって立ち現れてきたよなア

と思わざるをえなかった

 

学生も監督もアタマがよくて

野球も遊びやゲームとして扱える連中が揃えば

今の時代

どうしたって強くなる

トレーニングひとつするにも

どうすれば効果的に短時間でできるか

それを考える力が違う

しかも高い偏差値をたたき出せる勉強の集中力を持っているので

どんな対象でもうまくこなせる

うまくいかない時の気分の逸らし方や気分転換や

再度また挑戦する場合のアングルの定め方もうまい

 

大学を是が非でも受験しないといけない単なる受験上位校ではなく

そのまま慶応大学に進める条件を持っているので

他の大学に受験して出て行こうと考えることもできるし

自分は慶応大に進むことでいいから

そのかわりスポーツに打ち込もうという選択もできるという

自由な選択肢の幅があるということがすごく気分の強みになる

医学部には進めないとしても

最低限でも経済学部あたりや文学部には行けるのだから

それでもいいや

そうしてお父さんの知りあいの会社に入って

30歳で年収1000万ぐらいでいいかな?

多くを望みすぎてもいけないしナ

というのが

慶応の下から来る子たちの考えの基本にある

 

慶応でなくても

いい監督さえ呼ぶことができれば

学業では冴えないうちの高校でも…などと考えるのは

大まちがい

アタマのいい優れた監督は冴えない高校には絶対来ない

せいぜいその高校出身の優勝経験なんてまったくない中年先輩が

ほんじゃオラが指導したるか?

とか思って

任に付くのが関の山

昔ならそういう監督のまわりに

ボンクラな学生たちが集まり

みんなで「がんばれ!ベアーズ」していく楽しみもあったけれど

現代では

勉強ができない子はほぼスポーツもできないので

そうは問屋が卸さない

スポーツができるというのは

スポーツジムやスポーツクラブに小さい時から通わせられる親があ

通わせようと考える親がいる

お弁当を毎日作り

送り迎えし

賢く励ましてあげたり

プロの試合をちゃんと見に行かせたりできる親がいる

ということを意味し

昔のように放っておけば野山で子どもが勝手に強くなるような

そんな時代ではもうない

 

今どき

勉強のできない子は

いくらスポーツをやらせようとしても

ちょっとできた暇な時間になにをやっているかというと

ゲームばかりやっている

勉強のできる子もゲームはやるが

ゲームは自分の社会的未来を作ることはなく

やり過ぎると未来を損うと本能的にわかっているので

ちゃんと自己規制をして

ちょっとゲームしては適当なところでやめて

勉強したりトレーニングしたりする

だいたい

ゲームをするということが他人に金銭を与えてしまうことで

自分には金銭が入ってこないということをわかっている

なんであれ時間と労力を使って行なうなら

行ないながら未来の自分に

金銭と地位と安楽安定した生活が入ってくるものをやらねばならな

そういうことが子どものうちからわかっている

親や家庭からそういう精神や判断が染み出している環境なので

特別に学んだわけでもなく

彼らは自然にそのように行動していく

 

仙台育英の偏差値はいくつかな?

と思って調べたら41から60だった

同じサイトで慶応義塾高校の偏差値を調べたら

さっきも書いたが76だった

 

まったく

ヤベえ

なのである

 

相手が青白きガリ勉くんたちだけのいる受験校でなく

よっぽど赤点ばかり取らないかぎり

夏といえばニューカレドニアや

タヒチや

ちょっと隠れたリゾート地に

毎年

家族で行きつつ

しっかりうまいものを食べて

いろいろと遊びまわり

慶応大学への進学がちゃんと保証されている連中で

中学から上がってくるちょっとユルいアタマの学生たちでも

高校から入ってくる偏差値76くんたちと毎日接しているものだか

自ずとお勉強のカンやコツというのは

放射能となって染み込んでくる

いい意味で被曝するので

環境というのは恐いものなのだ

 

しかも

慶応中等部はちょっと自由奔放でユルいが

慶応普通部は厖大な量の宿題が課されるので有名で

学業的にはかなり厳しく

ここで三年間過ごせばお勉強のできない子にはならない

普通部の部活動は週3回までと決められており

部活を理由に勉強を怠けるのは許されない

 

慶応の森林監督が

新しい高校野球の可能性を拓いたと思ってもらいたい

というようなことを言っていたが

後戻りのきかない決定的な格差の見せつけを行なっちゃいました

とも言っておいたほうがいいかもしれない

 

とてもではないが慶応高校にも慶応中学にも入れない子

とてもではないが慶応になどわが子を通わせられない親

そもそもケーオーに縁もゆかりもない非正規雇用のシングルマザーの子

せっかくの大企業をうつ病になって止めてしまったお父さんの子

殺人ワクチンを打った親がヨイヨイになってしまって

日夜介護と家事に翻弄されることになった子

彼らには

慶応高校の活躍もあの森林監督の話もなかなか複雑に映ったことだろう

もちろん慶応が悪いのではなく

森林監督や選手たちが悪いのでもない

しかしこのあまりの歴然たる違いを彼らの心が乗り越えるためには

「あの人たちはじぶんとは違う生物なんだ」と思ったり

「運命が違うんだ」と思ったりするほかにはないだろう

「みんなちがって、みんないい」では解決しないだろう

仏教本や精神世界本を覗いて

じぶんのカルマがこうさせているんだ

と思うようになれば

ソーカガッカイもトーイツキョーカイもすぐそこである

ちょっと通俗ポエマーっぽいセンスがあれば

「生まれた時が悪いのか

 それともオレが悪いのか…」

などと

『昭和ブルース』の天知茂の声を真似て呟くようになるかもしれない

 

昔むかし

あるところに……

 

ぼくなら

シンデレラの話などを

もう一度

聞かせてやりたい

 

 




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