頼朝はどこにもをりてひたすらに蹶起せざれば木を植ゑてゐる
馬場あき子
石井克人監督の『茶の味』こそ
21世紀はじめの
日本映画の最大の傑作だったはずだが
忘れている人も多いようだ
『茶の味』予告編
このヘンテコさ加減
脱力したタラっとした和みぐあい
誰もが自由にのんびり自己探求をしている雰囲気は
バブル崩壊後の日本の
とにかくもダラダラと平和ではある空気
それなりに文化の極みに達した空気を
本当によく表していた
2004年の作品だ
ということが
とっても
重要
この後
2006年に始まる安倍晋三内閣と
第二次安倍晋三内閣が
日本のモラルも
経済も
文化も
すべて破壊していくからだ
平家にあらずば人々むなし
ならぬ
安倍取り巻きにあらずば人々むなし
となって
頼朝を待つばかりとなった
平成日本
いまだに
以仁王は挙兵しないし
頼政も旗揚げしていない
頼朝も来ない
ちなみに
以仁王の姉は
式子内親王である
よ
いま見直すと
『茶の味』は
安倍晋三政権が破壊してしまった
平成日本の最良の頃の文化的空気を
みごとに伝える
タイムカプセルのような映画となっている
CM制作を本領とする石井克人は
『8月の約束』で
ゆうばり国際冒険ファンタスティック映画祭ビデオ部門グランプリ
『鮫肌男と桃尻女』(望月峯太郎原作、浅野忠信主演)
『PARTY7』(永瀬正敏主演)が評価されて
時代の新監督
と目されるようになっていた
『茶の味』は
もちろん
小津安二郎の『お茶漬けの味』や
とりわけ
小津の遺作『秋刀魚の味』を
冗談半分に引き受けるタイトルだが
21世紀はじめまでのニッポン家族や
ニッポン日常というものを描こうとした点では
けっこう
真面目な取り組みだったかもしれない
なんたって
映画の中に闖入するあれらの歌が
史上稀に見る奇妙奇天烈さで
あれが
1990年代から2000年はじめのニッポンだよなァ
と思い出させられる
監督本人の作詞作曲になる「山よ」!
日本映画史上
最大の奇曲!
眉の繋がった俳優・我修院達也と
素人の轟木一騎の歌唱場面の
鬼気迫る異様さを
デューク・エイセスの声が支えて
2004年カンヌ国際映画祭監督週間の
オープニング作品として上映された時には
世界は
文字通りぶっ飛んだのだ
「山よ」
♪なんであなたは三角定規なの?と
我修院達也の歌う「三角形」も
なんという
とんでもなさか!
こうした
とんでもなさ
奇妙奇天烈さ
荒唐無稽さ
これらを誰もが必死に探し求めていたのが
1980年代や1990年代から2000年はじめだったが
それがいつのまにか
「うつくしい日本」などと
シレーッと発語してしまえる
偽善者新興成金どもによって
アベられてしまうことになったのだ
「三角形」
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