2023年8月28日月曜日

Dies irae

 

 

 

スタンリー・キューブリック『シャイニング』の有名なオープニングの

あの圧倒的な魅力

映画学や映画学校では

教科書として学ぶ必須の資料のひとつ

 

https://youtu.be/_Jq0SLgE9wI

 

ベルリオーズ『幻想交響楽』の第5楽章「魔女の夜宴の夢」に沿って

一見

自然の中を走っていく自動車にぴったり沿うように

しかし

はるかに自由に山間や川沿いを走り抜けていくドローンのような視線が

物語の舞台となる孤絶した巨大なホテルへと

見る者の意識を導いていく

 

映画撮影技術としては

物語の展開する世界の全体像を観客に把握させるための

エスタブリッシングショットの模範的な使用例

広大なロケーションを広い画で見せ

そこで展開されていく物語のなかでの主人公の孤絶感を

感覚的に観客に掴ませるのに有効

 

エスタブリッシングショットは

ロングショットや超ロングショットで作られるので

よいショットを撮るには

撮影にあたっては

日をかえての何度ものロケハンや撮影の繰り返しが

必要になる

 

クレジットタイトルの文字に明るいブルーを使い

1980年時点としては

オープニングからはやくも斬新な色彩感覚を提示している

ホラーでありながら

暗い陰気なベトついたものにしない

最先端の美意識を見せつけたところに

名匠キューブリックの矜持があっただろう

 

ベルリオーズ『幻想交響曲』の

5楽章「魔女の夜宴の夢」(Songe d'une nuit du Sabbat)

弦楽器による不気味な音型で始まり

テーマは変奏されてクラリネットで奏でられていく

鐘が鳴り

グレゴリオ聖歌『怒りの日』(Dies Irae)が

ファゴットとオフィクレイドで奏される

弦楽器による急速なロンドとなり

フーガを交えながら

咆哮のように全管弦楽が鳴る圧倒的なクライマックスを構築して

曲が閉じられていく

 

・カラヤン指揮のパリ管弦楽団版

https://youtu.be/DmOFplgWzyk?si=7r_jLxKbNCwJk9J-

 

・ヤンソンス指揮のベルリンフィル版

https://youtu.be/lBzOfjYpPT4?si=GuMlzl4RamCEsfiH

 

もとはグレゴリオ聖歌の「怒りの日(Dies irae)」の旋律であり

これはベルリオーズ以外の作曲家も使用して曲に生かした

 

繁栄や文化のむなしさと死を結びつけて

詩作や芸術のインスピレーションの原点とするヨーロッパ中世を

19世紀ロマン派は再発見して復活させたため

ロマン派の影響下にある作曲家たちにとっては

一度は作曲しておきたいテーマとなった

 

https://youtu.be/2OBB5-bP6qs?si=0_SsjgMBdfSNQXSF






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