2024年9月14日土曜日

バニラぎらいの終わり


 

わたしの子どもの頃は

アイスクリームといっても

それほど種類があるわけではなかった

 

もちろんバニラがあったが

ほかにはチョコレート味や

へんな着色料と添加物でつくった

オレンジ味やイチゴ味や

メロン味のようなものがあった

 

せいぜいこんなところが

味のヴァリエーションで

アイスクリームが食べられる時は

シンプルなバニラなど

子どもは避けがちだった

 

大人になっても

バニラぎらいはなんとなく続いたが

そもそもアイスクリームを

ほとんど食べなくなったので

ほかの味を選ぶというのでもない

アイスクリームどころかかき氷さえ

まったく食べなくなっていった

 

いつのころからか

レストランのデザートで食べたりするうち

シンプルなバニラアイスというのが

とてもおいしいと思うようになった

チョコレート味やピスタチオ味などでなく

ただバニラの味がついているだけの

白いすんなりしたアイスクリームが

いちばんうまいと感じるようになった

 

子どもの頃に食べたアイスクリームは

たぶん質のいいものではなかっただろう

駄菓子屋の店先の冷凍ケースから選ぶのは

ラクトアイスのたぐいだったのではないか

暑い日に紙カップに木の匙を挿して

掻くようにして食べるぶんには

子どもにはじゅうぶんだったとはいえ

 




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