2017年1月16日月曜日

小さな文字の並び



鼓動が速まるような
感銘といってよいものを受けて
その勢いで目が覚めたが

夢の中で
不慣れといえばあまりに不慣れな人の詩を見せられていて
言葉並べは自由だとはいえ
ひどいものだなあと思いながら
それでも最後まではと
字面を追い続けているうち

五連目あたりで
ふっと胸を突かれるようだった

なぜか
その連だけ
文字のポイントが小さくなっている
八行ほどある連だが
遠いように
文字が小さい
その連だけ

ワードプロセッサーの
使い損ねと思えたが
見続けるうち
これは
読み手のこちらの思いを
あらかじめ読み込んだ表記なのだと
じんわり
わかってきた
その連だけ
他の連とはちがう内容で
それまでの連のように読もうとすると
わかりづらい
理解の層を切り替えないと
焦点が合ってこない
焦点を合わせられるまで
気持ちがグッと遠ざかってしまう気になる
そんな状態が
あらかじめ
文字の小ささで表わされてしまっている

そう思った時
予期しなかった途方もない感銘を受け
眠っていながら
心臓の鼓動が速まって

起きてしまった

不慣れな人の詩だと
夢の中では受け取っていたが
起きてしまうと
もう
どんな人のものだったのか
顔も雰囲気も浮かんでこない
たゞ
こんなのを書いたよ
印刷したよ
どうだい?
どんな出来だい?
と直接渡され
ちょっと乱暴な
風のようなものが
こちらの手の甲にかかったのを
覚えている

この何十年
詩からは受けたこともない感銘を
不意にぶつけられ
まじまじと
五連目あたりの
小さな文字の並びを見つめていた夢の中へ
もう一度もぐり込もうと
身を横たえたまゝ試してみた

かなわなかった

詩の内容など
まったく記憶にも残っていない
感銘がつよく残り
鼓動は
治まらなかった

それどころか
小さな文字の並びの雰囲気を思い出そうとすると
鼓動は
また
ふたたび
高鳴り出すようだった




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