わたしは冷たい人間かもしれない
そのように難じているであろう人たちを
幾人も知っている
しかし
他人の事情も心情も無視して
自分の好みや趣味や価値を
至上のものであるかのように押しつけてくる人たちを
わたしはどうしても許すことができない
人づきあいでは
はじめから拒否や遮断はしないものだから
相手の考えや好みを
そうですか
そうなんですかと
はじめのうちは聞き続けている
けれども
段々昂じてくるにつれて
これ以上受け止め続けるわけにはいかず
時間も割くわけにはいかないという段階に来る
そういう時にわたしは
時間がないので
とか
このところ忙しいので
とか
だんだん
フェードアウトしていくように距離を取っていくが
それでも稀に
いかにも鈍感に
ぐいぐい押し続けてくる人もいる
そうすると
わざと感情的に振舞って
いかにも
断ち切ると呼ぶにふさわしい対処をする
どんなことであれ
その人の庭の中でなら
いくらでも時間をかけて
労力も費やして
ぽつんとひとりぼっちで
価値を追っていてもらえばいい
他人を巻き込まずに
すこぶる孤独に
騒ぎ立てせずに
たゞそれを望むだけのことなのに
自分が価値と思うものに合流しないと
どうかしているとか
非人情だとか
愚かだとか
社会正義に反するとか
べらべら言い立て続ける人たちが
ほんとうに絶えないが
端的に言って
魅力がないからさ
とも思う
そういう人たちには
批判や愚痴や
ものの悪い面ばかり絶えず見つけてきては
少しでも大袈裟に言い立てて
だから
こうしなければいけない
変革していかなければいけないと
まァたいへんな気勢だが
どの時代にも
そんなふうにオダを上げて時間を浪費し
ひとりで心を集め
静まることを怠けて
たゞたゞ
死へと進んでいくばかりの人たちが
いっぱい
いっぱい
いる
二度と戻っては来ない
貴重な
本当に一度きりの
時間の流れの中にいるというのに
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