殺された子たちが
夢から
次々
醒めるころ
たぶん
この世の
残酷な食べものでは
もう口に合わないから
だれも
ここでは
考えつけもしない食べものを
いそいで
発明しないといけない
生きていることと
死んだこと
その紙一重を
行き来できるような
指先で
また
思いで
ことしの
夏も
いま
真っさかり
疲れた土に
ひ弱そうなのに
蒔いてみた
朝顔の種
いくつかが
プランターで
ことしは
意外なほどの花ざかり
毎朝
濃紺と紫の混ざった
つよい花を
いくつも開かせる
まだ暑くないうち
しずかな中
見つめるのが楽しみ
蝉も鳴かぬうち
蝉が鳴き出すと
ぐっと温度もあがり
からだで生きているのを
思い出させられる
からだを
忘れていられる時間に
咲き出た朝顔を残し
からだを養う流れに戻る
もちろんその流れも
夢のうち
夢の夢の夢の夢のまだ夢の
外から来ても
夢のうち
詩がひそひそと
しおしおと
鬱々と
ワタクシを吐露する
ふりをする
時代もあった
ワタクシの
垂れ流し方が発見され
流れに乗って
詩人たちが
オレのワタクシ
ワタシのワタクシ
アタシのワタクシを
あっちこっちで
吐露
吐露
していた
それだけでは鬱陶しいので
薔薇園を添えたり
海の風景や
嵐や
山や雲やと
描写も添えたり
そんな時代もあった
ということ
それだけのこと
いまも
詩人たちは
じぶんのワタクシを
うるさいほど
吐露
吐露
しているようだが
それほど
たいしたワタクシを持ってないので
うすっぺらの
ペナペナなワタクシなので
どこかのオジサン
オバサン
あるいは神経質娘が
ヘンなことばづかいをして
ひとりでイッテるように
見えるだけ
そんな時代もあった
ということに
それだけのことに
なる
いずれ
そんな時代なのだ
いま
ワタクシはぺなぺなでも
ワタクシのまわり
一ミリほど離れたまわりでさえ
ぺなぺなでは
ないかもしれないぞ
絶望するなかれ
ぺなぺなワタクシ
も
使いよう
ぺなぺな詩
いいんで
ないの
逆立ちさせれば
なぺなぺ
いいんで
ないの
なぺなぺ
に
理あり
なぺなぺ有理
ガザばかりでなく
ウクライナも
アフリカも
イラクも
シリアも
もう
あちこちで殺しあい
あるいは
一方的な勢いでの殺しまくり
それに
日本の近未来における
集団的自衛権の危うさはどうか
それとも杞憂か
国際法学者や
平和学の学者なら
どんな見解を聞かせてくれるだろう
そう思って
ひと晩
飲み食いしながら話してみたが
こちらが漁っている以上の情報など
まったく知ってもおらず
格別の思索をめぐらしているわけでもなく
結婚したいだの
子どもがほしいだの
子どもができれば
配偶者などどうでもいいだの
いまの恋人は
じぶんの話をよく聞いてくれないだの
国連にもいて
外務省にもいた人が
まぁ
こんなもの
ガザばかりでなく
ウクライナも
アフリカも
イラクも
シリアも
じぶんの専門地域じゃないので…
まぁ
こんなもの
ポジティヴ・シンキングとか
楽観思考とか
創造的な明るい姿勢とか
頑張ればできるとか
なんとか
ガザで殺された人びと
子どもたち
あれらの顔や
からだを
からだの切れはしを
からだだったはずのものを
数百とまではいかなくてもいい
数十ぐらい
写真で見てから
おなじことを
主張し続けてごらん
それでも
おなじことを言い続けられるなら
ほんもの
次のステップは
じぶんの子どもの頭が
砲弾の破片でスッ飛ばされた後に
おなじことが
言い続けられるかどうか
じぶんの手足が
ワカメのような肉片にちぎれた後に
おなじ気概でいられるかどうか
神さま
どうぞ人類のみんなに
そのひとに合った
さらなるステップを
お与えくださいますように
みんなのからだが引き千切られ
脳がすっとび
家族も友も恋人も
目の前で銃殺される経験を
平等にみんなに
妻が招待されて
暑い中いやいやながら
大相撲名古屋場所に行ってみると
中日新聞の記者がいて
ずいぶん威張っていたそうだ
日経新聞や朝日新聞の記者が
なにかと偉そうにしているのは有名で
どこでも鼻つまみだが
中日新聞の記者も
まるで日経新聞や朝日新聞の記者のように
威張っていたそうだ
日経新聞や朝日新聞の記者でもないというのに
日経新聞や朝日新聞の記者のように
中日新聞の記者なのに
イランの最高指導者が
ガザに武器提供しようと決めたとか
イスラエルにやられっぱなしでは
ガザがかわいそうだから
…と
人情と任侠にあふれた
近頃じゃあ
ちょいといいお話
…なわけはないがネ
武器が渡る先はハマスだから
(連中だってひどいものだ
(ふつうの住民がいる近所から
(ミサイルなんぞ
(やるんじゃないよ
だがね
イスラエルがやり過ぎなのを見て
世界中で心を決めた人びとは
今度という今度は
多いだろう
とりあえずイスラエルを根絶やしにしよう
殺されたパレスチナ人の数ぐらいは
最低限死んでもらおう
そうじゃなきゃ運命の秤が傾いたまゝ
イスラエルの原発が攻撃されようが
核兵器が落とされようが
あそこになにが起こっても
ほら見たことか
バチが当たったよ
武装もしてない普通のガザの人たちを
あんなに平然と殺しまくったんだからね
しかもパレスチナ人の土地に
勝手に入り込んで来て
かたっぱしからパレスチナ人を殺し
追い出して
ここは自分の領土だなんて言い張った連中だからね
ほら見たことか
ほら見たことか
なんて
そうして
たゞ見ておくことにしよう
できれば
イスラエルなんてものがあった歴史記述も
ひそやかに
たくみに
じんわりと
この世の記憶から消し去っていこう
なんて
世界中で心を決めた人びとは
今度という今度は
多いだろう
滅ぶべきものを
滅ぶがままにしていく
とか
戦争を
止めもせずに
ただ見ているとか
そんな戦い方もある
何千年かかろうが
機を見て
そういうことをしてやる
そんな落し前のつけ方もある
いや、なに
アタシのことじゃ
ゴザンセンがね
アナタがたの心を
代わりに表白してさしあげてるだけで
アナタがた
けっこう
過激ですなァ
けっこう
かっこう
カッコウ
ついでに
ホーホケキョ