2022年4月10日日曜日

ふかくわたしのもの

 

 

マルグリット・デュラスの『物質的生活』(1987)

こう書いてあった

 

わたしは捨てた。そして、後悔した。

人生のどこかで、捨てるということをすると、いつも後悔する。

しかし、もし捨てないならば、

もし別れないならば、

もしその時間を保持し続けたいと望むならば、

整理整頓することに

人生を保存することに

人生を費やしていきかねないのだ。

 

人生を保存することに人生を費やしていく

警戒するべきは

このこと

 

これには共感する

 

だれもが

これをやってしまっている

 

ところで

 

デュラスでないわたし自身は

このところ

こう

思うように

なってきてもいた

 

捨てたり

別れたりすると

こちらの人生を使うことなしに

かえって

それらを

よく整理整頓し

保存することができるようだ

 

捨てたり

別れたりすることで

それらを

よりよく所有できるようだ

 

デュラスでないわたしは

後悔ということを

しない

いつからか

しなくなった

 

捨てもせず

別れもしないからかもしれない

 

捨てる

と言ってもいいような事態になり

別れるつもりもないのに

別れたような事態になって

離れていく

だけ

だからかもしれない

 

わたしの人生に絡まってきたもので

わたしがふかく所有し続けていないものは

ない

 

捨てず

別れなかった時には

かえって

所有していなかったのを

覚えている

 

離れていったもの

消えていったものは

ふかく

わたしのもの

 

 


 

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