煙草くさき国語教師が言うときに明日という語は最もかなし
寺山修司
どういうわけだか
中学生の頃に通っていた塾の
ネズミ男によく似た
髪の薄い
それもチリチリの髪の毛の国語教師を
ふいに思い出した
中学生ながらに
意味のない授業だなと思いながら
しかたなく聞いていた
だって
国語の資料の便覧を使って
同音異義語や
反義語や
ことわざなどをいっしょに読んでいくだけ
なんだもの
しかたなく聞いていた
英語や数学とセット価格なので
国語の授業の日も
いちおう来ていたのだが
張り合いもなければ
意味もない授業だなと思いながら
しかたなく聞いていた
国語の授業なら
通っていた学校の先生のほうが
ド迫力で
怖すぎていやな授業ではあったが
中学生ながらに
あっちのほうが凄い授業だよな
とはわかっていた
なにせ
短歌も俳句もたくさん暗記させられるのだ
暗記してきているはずのものを
教室であてられて暗唱させられる
暗唱できなければ
髪をひっぱられて引き摺りまわされるのだ
正岡子規も
与謝野晶子も
そんなふうにして
スパルタで叩き込まれた
中原中也の「月夜のボタン」も丸暗記だ
島崎藤村の詩だって丸暗記だ
まったく
詩歌を詩歌らしからぬ軍事教練ふうに
丸暗記させられたのだ
そうして
塾の国語の時間には
ネズミ男が便覧を読んで誤魔化しやがる
意味のない授業だなと思いながら
しかたなく聞いていた
風采のあがらないチリチリ毛だな
と思いながら
しかたなく聞いていた
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