こころに
もっともふかく来たのは
夜なかの
あかりに照らされてもいない
とおい桜だった
あの静まりようは
なんだろう
さまざまなものを吸うようで
雑念だの
体を成さない思いだの
中途半端な要らぬ感情の萌芽だのを
至極容易に
吸いとり続けてくれたようだった
照らされない
夜の桜は
白いといえば白いが
ほんのりと
おぼろげに白く
白とはいえない白さで
色やひかりとは
位相を異にしている
日中の
あかるいひかりのなか
桜を見ていると
いろいろなことを思い出し
もの思いも絶えないが
照らされていない夜の桜は
こちらに
ものを思わせない
見ているだけで
静まりようは
こちらをも浸していく
色やひかりとは
位相を異にしている
白とはいえない白さが
ただ
静かだ
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