2022年4月4日月曜日

あの静まりようは

 

 

こころに

もっともふかく来たのは

夜なかの

あかりに照らされてもいない

とおい桜だった

 

あの静まりようは

なんだろう

 

さまざまなものを吸うようで

雑念だの

体を成さない思いだの

中途半端な要らぬ感情の萌芽だのを

至極容易に

吸いとり続けてくれたようだった

 

照らされない

夜の桜は

白いといえば白いが

ほんのりと

おぼろげに白く

白とはいえない白さで

色やひかりとは

位相を異にしている

 

日中の

あかるいひかりのなか

桜を見ていると

いろいろなことを思い出し

もの思いも絶えないが

照らされていない夜の桜は

こちらに

ものを思わせない

 

見ているだけで

静まりようは

こちらをも浸していく

 

色やひかりとは

位相を異にしている

白とはいえない白さが

ただ

静かだ





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