今の住まいは
空気が
南側の部屋から北側の部屋にむけて
廊下を経由して
流れるようになっている
春になって寒くなくなった頃から
また肌寒くなる秋のなかば頃までは
だいたいどの窓も
いくらかは開けているので
住まいの中央を
つねに
空気が流れている
いつも気が流れていて
いつも入れかわっているのは
精神やこころについてのわたしの理想なので
今の住まいの空気の流れぐあいは
ある程度
それを体現している
外で風がやや強い時でも
部屋のなかにいると
あまりそれは感じられないが
外出しようとして玄関のドアを開けると
ふいの風圧がドアにかかって
開けようとする細い隙間に
強くうなりの音が立つ時がある
22階という高層なので
風の流れというより
ドアを開けた時に生まれる圧力差が
一気に押し寄せてくる感じがする
引っ越してきた当日
住まいのなかと戸外との間に生じる
この圧力差に気づかず
引っ越し業者が棚の上に置いておいた物の配置図が
アッという間に外に飛び去った
さいわい回廊の一部に引っかかって
紛失はしなかったが
高層階での空気の流れから生じる
予想もしなかった強い圧力差を
はじめて経験した瞬間だった
ひとつ前の住まいは1階で
ベランダの前には
低木が花を咲かせたり
桜の木々が花を咲かせているのが見えたり
雑草が茂るひろがりがあったりして
部屋のなかと戸外とのあいだに
強い空気の流れが起こったりすることもなく
圧力差も感じなかった
秋になれば
雑草にまじって蝗虫や
蟋蟀が鳴いて
冬の入り頃まで
耳を楽しませてくれた
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