暴力によってしか持てないものは、
クロムウェル
すこしでも
生き物のいのちを奪わないように努めて
生きようとしている者たち
ではないのだから
いのちを奪われていってもしかたがないんだよ
と
あつし君が言う
深夜もやっている喫茶店に
ぼくらはいて
もう
夜の1時半
しあわせな時間だ
人間はほかの生き物を平然と殺して
のうのうと生きているだろ
だから
いつかどんなにひどい殺されかたをしても
当然の報いなのさ
と
みのる君が言う
そうだよ
人間に殺された生き物たちの念が
ときどき人間に入り込んで
仲間であるはずの人間にむかって
復讐を遂げるんだよ
と
ひろし君が言う
この喫茶店に来ると
ぼくはいつも
大好きなモカを飲んで
その次には
マンデリンだとか
ブラジル・サントスとか
キリマンジャロとか
飲んでいって
たまには
トラジャとか
ブルーマウンテンなんかも
飲んだりする
高価なのに
ブルーマウンテンには
あまり感心しないのだけれど
夜の2時過ぎに飲んでいたりすると
とんでもなく恵まれた
ふしぎな時間を
生きている気になる
それにさ
どうせ
ひとを殺したやつらは
来世でおなじように殺されるしくみなんだよ
ちゃんと
転生のしくみがわかっていれば
そんなこと
わかるはずなんだけれどね
と
ひろし君がまた言う
それじゃあ
「罪もない」ようなのに
いま殺されていっているひとたちも
前世では
おなじようにひとを殺した
って
わけかい?
と
あつし君が聞く
そうなんだよ
おそろしいほどに
まったく同じ殺されかたを
するように
できているんだよ
と
ひろし君が答える
ということは
いまの人間が豚や牛や鶏にやっているように
毎日毎日
大量に機械的に殺して
解体して
きれいな食肉に
されていくようなことを
いつか
いまの人間たち全員がやられる
っていう
わけかい?
と
みのる君が聞く
そうだよ
まったく同じように
ツーッと首の動脈を切られて血抜きされたり
内臓をゴソッとくり抜かれたり
ツルッとした肉に
きれいに切り分けられたりしていく
っていう
わけさ
と
ひろし君が答える
こんな話のながれを聞きながら
ぼくは夢想する
来世はぼくも
コーヒー豆に生れ
摘み取られて
干されたり
煎られたりして
さらには挽かれて
それなりの名のついたコーヒーになって
深夜の喫茶店で飲まれたり
無名のコーヒーになって
安っぽい紙コップに注がれて
添加物と混ぜられて缶コーヒーにされたり
するのかもしれない
って
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