意識だけははっきりあって

  

まだ暗いというのに

朝方に目覚めてしまうことがある

恐ろしい時間と思う

やることがいっぱいある朝に

すっかり明るくなってから起きるのとは

だいぶ違う

あれは

存在の陥穽に

…というと大仰だが

あれこれ忙しい日常の意識と違う

かといって

眠くて眠くて

現実も自分の意識も

どうでもよくなるような時とも違う

意識だけははっきりあって

日常にかまけておらず

まだ体は支障なく動くものの

いずれ衰えて動けなくなっていくのだと

そんな気がかりもあって

意識だけははっきりあって

言葉を交わす相手などまったくなく

ただ意識だけになって

過去のあれこれも自分の好みや人格さえも

もう読み終えた物語のようで

意識だけははっきりあって

意識だけははっきりあって