もう二度と戻らない

あかるさを書けばいいのか

それとも

たのしさを？

エグさを書けばいいのか

とも訝しむ

真理とやらを？

あるのままとやらを？

迷いながら

そうして人は

煙草に火を点けてみたり

コーヒーを

ひとくち含んでみたり

部屋が

ちょっと繁華な路地の

二階にでもあれば

窓から下を見下ろして

ひらひらスカートが滑って行くのや

シャム猫が壁の上で毛づくろいしているのや

買われたばかりの

ソフトクリームの白さなんかを

眺めてみたりするだろう

そうして

ある日

決意するのだ

ここを引き払って

もう二度と戻らないと

ここがどこであれ

あらゆるここを引き払い

なににであれ

もう二度と戻らないと