朝はやく起きていたところへ
だいぶ時間も経って九時になるかならないかという頃
亀戸天神の船橋屋のくず餅が届いたので
さっそく食べはじめてしまう
これを江戸っ子はうまいと思ったのか と
“うまがろう”としながら
黒蜜やきな粉を絡め続けながら
ひと切れひと切れ
食べつづけてみると
うまいといってもいいのかもしれない部分も
なんとなくわかってきて
わるいもんじゃないかもな
と認めはじめる段階までだんだんと行きそうな
行けそうな
気もしてくる
ただの寒天とも同類の餅ともちがう舌ざわりが
たしかにあって
これを江戸っ子はうまいと思ったのか
グルテンを取り除いて乳酸発酵した小麦澱粉を蒸し上げた
味と舌ざわりなのだそうである
450日間無添加自然発酵させるそうで
消費期限は2日間のみ
グルテン含有率が3ppm未満
というところに
けっこうなヘルシーさがあることになる
添えてある説明書きを見ながら食べると
こういう食べものは
言葉がいちばんの調味料や薬味になるもので
なんというか
教養の要る食べもの
ということになる
文盲だったら
この味わいは追加され得ないのだ
まあまあ
うまい
ということなのだろう
こちらの舌に
このうまさを感知する繊細さがもっと開発され
もっと舌教養が深まれば
やっぱりうまいねェ、あれは
なんて
江戸っ子の振りが
さらにできるようになる
というわけか
それにしても
くず餅っていうから
てっきり葛粉でできてんのかと思ったら
葛粉なんてまるっきり使ってなくて
小麦粉だけだってんだから
驚いたよ、これには
なんでも江戸時代の創業者が千葉の船橋の出だそうで
その頃は千葉は小麦の産地だったから
亀戸天神の参詣者を見込んでそれを生かそうとしたらしいね
そんでも
なかなか手のかかる発酵製法で独特の食感を作り出したんだから
なかなかのもんだよ
だけど
どうしてくず餅なんて
まぎらわしい名前にしちゃったもんだろうかねえ
ところで
こういうものは食べ終わり頃に
かならず
器の底に黒蜜が残ったりするもんだが
沖縄産の黒糖をベースに
数種類の糖を独自にブレンドした船橋屋秘伝の味だっていうもんだ から
もったいないから食べちゃった
すると
これがうまいうまい
サトウキビのしぼり汁を煮詰めたもので
カルシウムやカリウムなどのミネラルや幾つものビタミンを
豊富に含んでいる
なんて能書きを読みながら
これは堪能したなあ
いい黒蜜ってのは
こんなにうまいもんか
って
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