「ああ、わたしが間違っていた!」
アルバート・アインシュタイン
10万円のおせちのプレゼントが
京都の高級料亭から12月31日に届いたので
元日はそれだけを食べた
メインとなっているのは
白味噌仕立ての出汁に実山椒を入れ
煮立てた中に
A5ランクの霜降りの佐賀牛をくぐらして
しゃぶしゃぶにして食べる料理で
椎茸やほうれん草
たくさんの葱も
いっしょに出汁に泳がしておく
料亭はこれを
山しゃぶと称していた
〆には
牛肉や野菜の味がたっぷり出た後の
煮詰まった出汁の中に麺を入れ
とろとろになった出汁といっしょに食べるのだが
最後のこの麺がとてもうまく
高級な和食というのは
存外
A5ランクの牛肉よりも
こんなところの味わいにこそ
存在価値があるのかもしれないと
思わされた
食べながら飲んだ
ルイナールのシャンパンのせいもあるのか
食後はぐっとだるくなって
眠くなり
やはり霜降りの牛肉と
味噌や麺のあわせを
胃にいっしょに入れるのは
もうじぶんにはあわないとも
思わされる
ともあれ
元日は
これら以外はなにも口にせず
たった一食の日となった
相対性理論と量子力学の関連についての概説書を読み続け
概説書とはいえ
相当に注意深く読むべきところに差しかかって
スターリンの秘密警察に処刑された
天才物理学者マトヴェイ・ブロンスタインや
その友人レフ・ランダウから
ジョン・ホイーラーや
ホイーラー=ド・ウィット方程式や
重力場のファラデー力線や
ループ理論のあたりを
山しゃぶで重くなった胃とはべつに
脳にいちばんの仮設キャンプを置いているらしい
意識は
さまよい続けていた
(もちろん現代の生理学では
意識は腸にも
大がかりな仮設キャンプを設営しているのが
知られてきている)
それにしても
物理学の先端の知見においては
空間というものが存在せず
空間を作る量子によってのみ空間は発生するとか
時間ももちろん存在しないとか
それが当たり前になっているのを
知るのと
知らないのとでは
いわゆる“世界”なるものや
日常の食卓や
バスルームや
住まいの建物のエレベーター昇降や
トイレでの時間さえも
まったく変質してしまい
意識はもう
古い見方に戻ることはできない
なにもない空間というものがあって
そこの中で物や分子や原子が動いているというイメージが
もはや天動説なみの幻影でしかなく
あらゆる場所で同じように進み続ける時間というものも
あまりに時代遅れの妄想に過ぎないと知ってしまうと
いつまでも「新型」と呼ばれ続けている
“昔の名前で出ています”*なウイルス煽りも
遠い花火のようにしか見えない
アホラシ…
と
呟いてしまう
*小林旭『昔の名前で出ています』
https://www.youtube.com/watch?
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