悲しんでも
怒っても
喜んでも
嬉しがっても
なにをどう巧みに考察しても
あるいは拙く省察しても
どうせ
誰もわたしの思いには
目もむけない
耳もかたむけない
反論であれ賛同であれ
ことばも
声も
返してくれない
こんなことを
じわじわと
痛切に
時にはしみじみと
思い知っていくだけの人生であり
人づきあいだったと
十年ほど前から
わたしはわたしの宿命として
受けとめるようになった
わたしだけの宿命では
ないのかもしれない
世の中が悪い
社会が悪い
国が悪い
人心が悪い
などと洩らすのは
子どもじみた愚かな嘆きだと
世間では言われるのが通例だが
いまだ
大変な放射能汚染がある地域で
オリンピックの聖火ランナーが走り始めた
などと聞くと
世の拗ね者のつぶやきのように
引かれ者の小唄のように
こころして
嘆き直したい気にもなる
やはり
世の中が悪く
社会が悪く
国が悪く
人心が悪いのだと
日本人のひとりひとりが
ほんとうに
どうしようもないほど
悪いのだと
そうして
もう若くもなく
あまりに多くの醜聞と
汚辱と
酷薄と
無責任と
非人情と
軽薄さと
表だけの取り繕いを見てきたものだから
嘆き節に
反歌もつけ加えておこうと思う
なにがどうなろうと
この国は
もう
絶対に更生することはないと
他人より
ほんのちょっとでも小金を稼ぎ
ほんのちょっとでも差をつけ
ほんのちょっとでもお大尽人脈にコバンザメし
ほんのちょっとでもより多くの安定と
安楽と安心とをわがものとするためだけに
人も土地も空気も水も売り払い
地位の上の者には這いつくばって利益を得ようとし
少しでも油っこいものを
少しでも多くのアルコールを
少しでも多くのキラキラしたものを
身に引き寄せようとするのだけが日々の信条という
そんな人びとだけのうねりで
揉まれ続けているだけの列島だから
もう
本当にどうしようもないのだ
巨大な天変地異でまるごと滅びるしか
ないのだ
そんな滅亡ののちでさえ
どうせ芽吹いてくるのは同じような輩だから
遠い未来にさえも
なんの希望もありはしないのだ
と
はっきりしない声で
ぶつぶつ
不平不満のように
呪詛のように
怨念のように
妄言のように
かすかな音を並べるだけの
反歌も
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