家のなかにはだれもいない
ひとり
机に向かっていて
そうして
もう
暮れがたというのに
机のわきの窓のカーテンも
まだ閉めていない
うすら青い
夜のはじまりの空が見え
あかりを灯したビル群が見える
パソコンのモニターに向かって
こうして
ぽつ
ぽつ
文字を打ってみている
机上にしか
あかりは灯していないから
家の中は
どこも薄闇
さびしくもない
わびしくもない
暮れがたの家の薄闇は
まるで
もっともしあわせな時の
こころ
そのもの
喩えだ
あくまで
「まるで」
を
ちゃんと
付けておかなきゃ
パソコンのモニターに向かって
文字を打ってみている
夢でないことは
よく
わかっている
窓外が
さらに暗くなったが
夜の空も
街も
まっくらになることはない
よく
わかっている
あれも
これも
このじぶんの人生の
専門家
なのだから
このじぶんの
プロ
だから
だれと分かちあうこともないが
このじぶんの生とは
これだ
おだやかだとか
しあわせだとか
こうであるほかないとか
どんな形容を
加える必要もない
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