ずいぶんはっきりした夢であった
四畳半の下宿に住むことになった
共同廊下との間には磨りガラスの引き戸がある
日本の住宅の部屋の仕切りによくあるような
小さな正方形のガラスを集めた戸である
カーテンがあるがふだんは開けておいてもいい
とはいえカーテンを開けておいたからといって
共同廊下の暗さがガラス戸の向こうには見えるだけだ
これならばカーテンは閉めておいてもいい
室内を照らす蛍光灯のスイッチは廊下にあるので
引き戸の端をいちいち細く開けて手を出し
パチンパチンとスイッチで点灯消灯をしないといけない
深夜に寝る時にやるのはちょっと不気味かと思う
部屋の壁に付いている小さな丸い蛍光灯もあるが
このスイッチは室内にあるので操作は楽である
しかし点灯してみると光量は少し少なくて
これだけで夜を過ごすと暗いかもしれないと思う
部屋からは外に面して大きな窓と小さな窓がある
大きな窓からはよその家の天井が見えるので
この四畳半の部屋は二階にあるらしい
室内は明るいが簡易ベッドを置くと手狭である
いろいろなことがあった人生だったが
結局ひとりでここに住むことになったか
つくづくという感じでそう思い過ぎてきたあれこれを
思い出そうとするがまったく思い出せない
仲の良かった人たちもずいぶんいたし
同棲もしたし妻もあったような気がするが
誰のことももうちゃんとは思い出せない
しかしそんな人たちとの時間はちゃんとあったと感じる
学生だった若い頃に友人の住まいに行くと
こんな四畳半に住んでいた人たちもいたなと思い出す
人生の終わりにはふたたびこういう狭さに戻るのかと思い
これが終の住処というやつだろうかと見わたす
起きるともちろん四畳半にはいない心身を取り戻す
しかしあまりに現実的でリアルだったので
じぶんの魂はもうあの四畳半に移動しているのかとも思うが
終の住処ではなくトランジットと見たほうがいい感覚がある
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