2023年5月30日火曜日

脱出定理

  

 

「(…)この種の状況では、楽観的な想定は危険なのよ。小動物が巣穴を作るときに採用する、脱出定理なのよ。そうした動物は、賢明ならば自分の巣穴に二番目の出口を作っておくわ。それは最初の出入り口が、捕食動物に見つかるだろうという悲観的な想定に基づいた行動よ。この定理を使わなかった生き物はすべて、もはやこの世にはいないわ」*

 

人間の世界では

「捕食動物」は

たいてい他の人間として現われるが

制度や

状況や

時代として現われることもある

 

知や

情報や

慣習

または習慣として現われることも

 

善意や

情や

思いやりや

合理性などとして現われることもあって

この場合には

なかなか

手強い

 

運命や

宿命などと

呼び慣わしていた時代は

まだまだ

のんびりしていたものだった

 

 



 

*フィリップ・K・ディック『聖なる侵入』(山形浩生訳)





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