2023年5月17日水曜日

ひとんち

 

 

歩いて行く

若い男女の会話が

一部分だけ

聞こえてきた

 

「それってひとんち?

敷地内でしょ?」

 

他人の土地の中に入って

なにかしているとか

していないとか

そんな話の一部らしい

 

話の内容には興味はないし

どうでもいい他人事だが

「ひとんち」という言い方が

おもしろいなあ

と思った

 

「ひとんち」は

「ひとの家」という意味だが

「ひとんち」という音で

「ひとの家」という意味が

こちらにもサッとわかるのが

おもしろいなあ

と思ったのだ

 

「ち」だけだと

「家」のことだとは

すぐにはわからない

 

「ん」と言われても

「の」という意味だとは

やはりすぐには

わからない

 

「おれんち」とか

「おまえんち」とか

「ひとんち」とか

そんな子ども時代の言い方の

たくさんの積み上げを経て

「ひとんち」の

「ん」の意味も「ち」の意味も

サッと伝わってくる

 

しかも

「ひとんち」という

音の並べ方がなされて

はじめて

「ん」や「ち」は意味を持つ

 

「あたらしんち」や

「ふるいんち」や

「あそこの白いんち」だと

まったくわからないではないが

かなりわかりづらい

 

そんなことに

ちょっと驚きながら

「ひとんち」かあ

「ひとんち」かあ

とつぶやきながら

若い男女が行くのを見ながら

こちらも歩き続けた

 

にっぽん語とのつきあいも

けっこう長くなったが

まだまだ

驚かされることが

いっぱいある

 

 



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